The Physical Society of Japan
日 本 物 理 学 会

物理系学術誌刊行協会の設立について

日本物理学会誌 2000年3月号(Vol.55-3)掲載予定


第55期理事会


 会誌の昨年の10月号 (第54巻10号) に、「物理学関連学術誌出版に関する相互協力について」という第54期理事会の報告を掲載しました。そこで、学術誌の電子化出版を推進し、世界へ向けての情報発信を一層強化するため、日本物理学会と応用物理学会の両学会会長名で「物理学関連学術出版に関する相互協力に関する覚書」を取り交わしたことをお知らせしました。覚書では、"Journal of the Physical Society of Japan", "Japanese Journal of Applied Physics", "Progress ofTheoretical Physics", および "Optical Review" を含む物理学関連学術誌の電子化出版や出版体制の強化を、両学会が協力して行うという基本方針が示され、出版事業を行うための組織として応用物理学欧文誌刊行会を発展的に改組して新しい刊行会を設置することを提唱しています。

 その具体的な方針をまとめるため、本会は応用物理学会、応用物理学欧文誌刊行会、理論物理学刊行会と協力して1999年7月に「物理学関連学術誌出版協議会」(以下新4誌協、座長:多田邦雄・横浜国立大学教授)を設置して検討を進めてきました。この協議会は、1997年12月から1999年3月まで電子化出版に関する協力のあり方や、学術誌出版の現状と将来の見通しなどを検討してきた「物理学関連学術誌電子化出版協議会」を継承するものです。新4誌協における検討を経て、1999年12月9日に、両学会にあてて「物理系学術誌刊行協会設立に関する提案」がなされました。両学会理事会で検討し、両学会による修正を経て、「提案」が新4誌協、及び両学会理事会で承認されましたので、ここに報告いたします。

 現在、インターネットを核とする情報技術の進歩と普及はめざましく、学術活動の根幹である、研究情報の流通交流の形態も歴史的な転換期を迎えています。この大きな流れの中で、新しい刊行会では基礎及び応用物理分野において科学技術およびその情報を世界に向けて発信する世界の第3極、すなわちアメリカ、ヨーロッパに並ぶ拠点を期を逃すことなく構築することを目指しています。このためにはこれまでの欧文誌刊行の経験蓄積を活かし、さらに効率的で高い専門的能力を有する事務組織を素早く作り上げることが必要です。

 両学会および新4誌協では、2000年4月に新刊行会発足の段取りで進めていますが、新刊行会への移行は、準備の整った学術誌から段階的に行っていきます。新刊行会の設立は、電子化出版の推進と密接に結びついています。学術誌の電子化出版システム、政府機関によるシステム開発の現状については、会誌の1月号に「物理学関連学術誌電子化出版システム運用委員会」による報告が掲載されています。国際協力の現状は、会誌の昨年の6月号 (第54巻6号) の「電子化出版についての国際パネル討論会報告」で報告されています。物理学の研究の発展のために、本会と関連学会との緊密な相互協力を進める必要があります。本会会員の皆様には、我が国の物理系学会のより一層の飛躍を目指した新刊行会の設立と、その後の活動に、ご理解をいただくと共に、ご協力をお願い申し上げます。

 なお、このような新刊行会の設立の経緯と、目指している「理想」および「将来」などについて会員各位に説明し、ご希望やご意見をお聞きするために、春の分科会の物性関係分科会会場(関西大学工学部)のM会場において、3月24日(金)17時から、「物理系学術誌刊行協会設立に関する説明会」を開催いたします。会員各位の積極的な御参加、御発言をお願いします。


物理系学術誌刊行協会設立に関する提案
1999年12月28日
物理学関連学術誌出版協議会


  1. 名称
       物理系学術誌刊行協会
  2. 関係学会(発足時)
       日本物理学会
       応用物理学会
  3. 関係する欧(英)文誌(発足時)
       Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)
       Japanese Journal of Applied Physics (JJAP)
       Progress of Theoretical Physics (PTP)
       Optical Review (OR)
  4. 基本的考え方および目標
    • 本刊行協会は,基礎および応用物理分野の学術誌出版において世界の第3極を構築することを目指す.
    • そのため,JPSJ,JJAPを中心とした日本の多くの物理系欧(英)文誌を統合した高い水準の総合的英文誌(例えばJournal of Pure and Applied Physics)を刊行することを目指す.また,今後他の英文誌が参加できるような体制にしておく.
    • 多数の英文誌の事務業務を遂行できる,効率的で,高い能力を有する事務組織を構築することを目指す.
    • 独自の事業(例えばオンラインジャーナル誌の発行等)を行うことも検討していく.
    • 本刊行協会は,最終的には独立した法人とすることを目指す.そのために,所管官庁への働きかけ等の準備も検討していく.
  5. 発足時期
       2000年4月
  6. 業務内容
    • 4誌の刊行・頒布に関し,その出版元より委託される編集実務,電子化・紙出版 ,広報,会計,庶務の業務等を行う.
    • 刊行協会固有の学術誌の出版等の業務を行う.
    • 日本物理学会および応用物理学会ならびにその他の学協会からの参加あるいは委 託による学術誌の刊行・頒布に関する業務を行う.
    ◎4誌の刊行・頒布については,緊急性並びに各誌の準備状況を考慮して,電子化業務, JJAPに関する委託業務,JPSJに関する委託業務等から移行し,その後順次 拡大していく.
  7. 会員
    • 刊行協会の会員は,当面は正会員のみとする.
    • 正会員は,当面は日本物理学会および応用物理学会の代表委員若干名,本刊行協 会の理事会役員とする.
  8. 理事会の役割と組織
    1. 役割
      (1)物理学関連学術誌出版協議会の役割の継承
      刊行協会の最終目標に向けての中期的および長期的構想の具体案を作成し,順次実施していく.
      (2)JJAP,JPSJ,PTP,ORの現状の把握,調整
      定期的に4誌から編集,出版,経理等の報告を受け,必要に応じて調整・助言する.
      (3)4誌のあり方に対する提言,勧告
      世界あるいは日本の物理系英文誌の動向を常に勘案して,4誌の編集,運営等のあり方についての提言,勧告等を行う.
      (4)刊行協会の受託業務の推進,事務局の監督・指導
    2. 構成および役割分担
      • 2000年4月の物理系学術誌刊行協会発足時の理事会役員の構成および役割分担は 下記のとおりとする.
        理事長1名
        副理事長1名
        出版担当理事
        (編集,刊行等)
        2名
        *1名(応物学会のJJAP編集担当責任者)
        *1名(物理学会のJPSJ編集担当責任者)
        *1名(PTPからの代表者)
        *1名(ORからの代表者)
        運営担当理事
        (庶務,会計等)
        2名
        *2名(応物学会のJJAP業務担当責任者)
        *2名(物理学会のJPSJ業務担当責任者)
        監 事2名
        合 計16名
      • 理事は,刊行協会固有の理事6名,4誌から派遣された理事(あるいは理事相当 者)8名(*印)の14名からなる.その他,監事2名を置く.
      • 上記理事会役員の任期は原則2年とするが,4誌から派遣された理事の実際の任 期は, 各学会あるいは各刊行母体の事情により短縮できる.
  9. 総会
    • 刊行協会の会議は,理事会と総会とし,総会を最高決議機関とする.総会では, 役員の選任,事業計画および予算,事業報告および決算,その他理事会が必要 と認めた事項を審議・承認する.
    • 総会は刊行協会の正会員によって構成し,理事長が議長を務める.
  10. 事務組織
    • 刊行協会の事務組織は,当面、日本物理学会および応用物理学会から出向した事務職員で構成される。
    • 刊行協会の事務組織は,日本物理学会,応用物理学会,応用物理学欧文誌刊行会 ,欧文4誌の現事情を十分考慮した形で発足させ,準備が整い次第,順次拡大発展させて いく.
  11. 刊行協会立ち上げ期の暫定的申し合わせ
    • 2000年3月末までに物理学関連学術誌出版協議会および両学会で審議・承認され た物理系学術誌刊行協会の規則類や関係事項は,2000年4月から適用・実施する.
    • それ以外の規則類や関係事項は,当面応用物理学欧文誌刊行会のそれらを準用し ,新しい規則類等が承認された時点で,順次切り換えていく.
    • 刊行協会の立ち上げ期には,一度承認された規則類や関係事項も状況の変化とと もに改訂していく必要があると思われる.これらの変化には柔軟な考え方で対 応することを原則とする.

以上


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