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日 本 物 理 学 会

2005世界物理年によせて
世界物理年日本委員会
春休みイベント報告
「めざせ! 未来のアインシュタイン
--対話を通して知る物理の最前線」



有 山 正 孝 〈世界物理年日本委員会 〉 
[日本物理学会誌 Vol.60 No7(2005)掲載]


2005年 3 月21・22日の両日、 東京・北の丸公園内の科学技術館において標記の行事が世界物理年日本委員会・文部科学省・日本物理学会・応用物理学会・日本天文学会・日本物理教育学会・日本生物物理学会・電気学会・日本科学技術振興財団の主催で開催された。
これは平成17年度科学技術週間のプレイベントという位置づけで文部科学省の財政的支援の下に実施されたものである。企画の趣旨は副題からも分かるように “大学・研究機関に所属する先端的分野の研究者との対話を通して青少年に物理の最前線を知り科学の面白さを理解してもらうこと” で、日本委員会は霜田光一日本物理教育学会会長を部会長とする部会を設け、主催6学会から幹事を出していただいて細部の企画と実施に当たった。
諸般の事情により開催時期は3月下旬、会場は科学技術館という条件は動かし難く、準備期間は限られていたので、部会では幾つかの分野を選び、その中で小・中学生にも興味を持たせることができる題材と経験・技法をお持ちで、かつ会期中に参加可能な研究者ないし研究グループを選び集めて調整することにした。その結果14のトークショウ、 “何でも相談コーナー” とアインシュタイン写真展を含む27のブースを開設することができて、イベントは無事に終了した。
前記の事情によりこのイベントでは全体の内容を “先端的分野の研究者との対話” 以上に一貫したテーマで貫くことができず、計画的編成は部分的にしかできなかった点は心残りであった。しかし2日間の入館者は5、000名弱で、これは過去5年間の春分の日とその翌日の入館者数の平均値の約2.4倍に当たり、この点ではまず合格といえよう。来場者の満足度については調査をしていないが、反応はそれほど悪くなかったと見るのは欲目であろうか。なお講師による評価を現在実施中である。以下に内容の概要を紹介する。
トークショウには科学技術館の持つ72席の AV ホール “Universe" を用いた。質問を含めて30分という時間制限、小学生まで含む多様な聴衆という難しい条件にもかかわらず、各講師にはよく工夫して先端的テーマを分かりやすく話していただいた。質問も活発に出され、小学生の女児が質問に立つ微笑ましい場面も見られた。3D画像を用いた天文・宇宙関係のトークは特に人気があり、会場は立ち見も出る大入り満員であった。理科離れといわれている中でアマチュア天文愛好家はまだ少なくないことはご同慶の至りである。
一方、ブースと “何でも相談” の担当者にも、時間・スペース・財政ともに窮屈な条件の中で設営・撤収の作業を含めて無理なお願いをし、ご協力をいただいた。いずれのブースも大変興味深いもので、また丹念に来場者との対話に努めてくださった。特に来場者の関心を集めたブースを幾つか紹介すると、まず自分で製作体験をするものとしてはホログラム、簡易霧箱、スターリングエンジンなどが挙げられ、子供たちは目を輝かせて製作に取り組んでいた。また先端的技術に接する機会を提供するものとしては、その場で採取した自分の頭髪の電子顕微鏡による観察、光ピンセットによる細胞の操作、熱伝導度の高い人工ダイアモンドのディスクで “包丁で豆腐を切るように” アイスキューブを切断する体験などがあり、しばしば順番待ちの行列ができていた。 “湯水の如く” 液体ヘリウムを使う超流動の演示は、半世紀前に1台のヘリウム液化機を導入するために大先生方が苦心惨憺される姿を見ていた著者としては感無量であった。
質問コーナーでも関心は天文・宇宙関係に集中し、科学一般については2日間で30件の質問があったにとどまる。しかも “動物はどうして誕生したのか”、“人間は最初どんな姿だったのか”(いずれも今春、小学校に入学する女児)など生命系の質問が多く、日本生物物理学会の方々の力を借りて対応した。しかし年配の方から特殊相対論の輪講をしたいので助言者を紹介して欲しいという注文もあったという。*1
写真展は1922年末にアインシュタインが来日した際の歴史的写真と岡本一平画伯のスケッチの展示であった。この機会にアインシュタインの人となり、来日の経緯と当時の日本社会の受け止め方、その時代背景等を改めて考察するのも意義深いことであろう。
このイベントの実施に当たっては多数の講師及びその補助者にボランティアとしてご協力いただいた。また部会メンバーには企画の段階から格別のご尽力いただき、一部の方には設営作業まで手伝っていただいた。さらに日本科学技術振興財団の日本委員会事務局担当職員および実施を委託した業者の蔭の努力と、数名の大学生・院生ボランティアの若さと活力に溢れる協力があったことを特筆しなければならない。一人一人のお名前は記さないが、全ての関係者各位に心からの感謝の意を表する次第である。
(2005年5月12日原稿受付)




 
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