JPSJ 2008年5月号の注目論文
「新超伝導体の母物質LaOFeAsの結晶構造と磁気的秩序を理論的に予測」
今年2月、これまで超伝導とは縁がないと思われていた鉄が主役を演じている新超伝導体La[O1-xFx]FeAsがわが国で発見された。銅酸化物高温超伝導体に匹敵する新たな高温超伝導体として関連物質を含めた研究が世界的に急速に展開されつつある。その超伝導機構の理解のためには、まず、フッ素(F)をドープする前の母物質LaOFeAsの物性解明が必須である。
石橋章司(産総研)、寺倉清之(北陸先端大)、細野秀雄(東工大)の3氏は詳細な第一原理計算による、LaOFeAsの結晶構造と磁気秩序(ストライプ状の反強磁性秩序)を明らかにした。
新超伝導体研究の先端をいく理論研究の成果として研究者の強い注目を集めている。
「新奇な超伝導現象、「強磁性ジョセフソン共鳴」の提案」
2つの超伝導体で絶縁体を挟んだジョセフソン接合素子においては、接合間に電位差が生じている場合は電位差に応じた周期の交流超伝導電流が流れる。 一方、強磁性体の磁化は、それが受ける磁場による首振り(歳差)運動状態を伴い、その周期に応じた周波数のマイクロ波を当てるとこの状態が励起される(強磁性共鳴)。
最近、前川禎通氏(東北大)の研究グループは、強磁性体を2つの超伝導体で挟んだ「強磁性ジョセフソン接合」においては、上記2つの振動運動がカップルすることによる新奇な超伝導現象--「強磁性ジョセフソン共鳴」と名づけた---が出現し得る。