JPSJ 2008年11月号の注目論文
「モット絶縁体である有機一次元物質の光キャリアダイナミクスの直接観測」
電子間の相互作用が強いため絶縁体になっているモット絶縁体に光を照射すると、"絶縁体→金属(→絶縁体へ戻る)"という変換がピコ(10-12)秒の速さで起り得る。東京大学の岡本博教授らの研究グループでは、励起(ポンプ)光で生じた光キャリアを光で検出(プローブ)するポンプ-プローブ分光法により、この超高速光キャリアダイナミクスを直接観測することに成功した。将来の光スイッチングの動作原理の一つを示唆する結果として、多くの研究者の注目を集めている。
なお、本研究に関連した、岩井伸一郎氏による解説 “Photo-Induced Insulator-to-Metal Transition in Organic Molecular Solid”がJPSJのNews and Comments欄 http://dx.doi.org/10.7566/JPSJNC.5.11に掲載されている。
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「磁性と超伝導を圧力・磁場で精密制御--CeRhIn5の量子臨界点で新たな知見」
磁性と超伝導は互いに相容れないもとこれまで考えられてきた。
しかし、フランス・グルノーブル原子力庁の青木大研究員らの研究グループは、重い電子系超伝導体CeRhIn5の純良単結晶に対する超高圧、極低温、強磁場の複合極限環境下での電気抵抗の精密測定から、磁性が超伝導の発現を支援していることを明らかにした。最近話題になっている鉄系超伝導体や銅酸化物高温超伝導体などの新奇な超伝導体における磁性と超伝導の共存・競合問題を解明していく上での新たな重要な結果として、多くの研究者の注目を集めている。
なお、本研究に関連した、大貫惇睦氏による解説 “Magnetism: A Good Friend to Superconductivity” が JPSJのNews and Comments欄 http://dx.doi.org/10.7566/JPSJNC.5.12 に掲載されている。
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