JPSJ 2009年1月号の注目論文
三角格子上のスピンが生み出す磁気状態を解明する新物質の発見
近年、幾何学的フラストレーションを伴う磁性体の典型の一つとして、三角格子面上の反強磁体に関する研究が活発に進められている。最近、鹿児島大学、東京大学、日本原子力研究開発機構の研究者からなるグループは、面間隣接スピン間の相互作用に乱雑さを導入した新しい擬二次元三角格子反強磁性体を作成し、面間相互作用のわずかな乱雑さによって、安定な磁気秩序状態が3次元的なものから2次元的なものへと移行することを見出した。
この研究成果は、フラストレート磁性体の解明に向けた新たな糸口をもたらすものとして多くの研究者の注目を集めている。
なお、本研究に関連した、川村光氏による解説“Possible Spin-Liquid State in Two-Dimensional Frustrated Magnets”がJPSJのNews and Comments欄に掲載されている。
どなたでもアクセスできるので、ご参照いただきたい。
鉄系物質SrFe2As2単結晶において高温超伝導の圧力誘起に成功
わが国発の鉄系新超伝導体の研究は、発見後一年足らずの現在、世界中で精力的に展開されている。最近、神戸大学の小手川恒准教授、藤秀樹教授と徳島大学の菅原仁准教授は、鉄系物質SrFe2As2の単結晶試料に圧力をかけることによって34Kもの高い転移温度をもつ超伝導を誘起することに成功した。
ランダムネスが不可避的に伴う、元素置換によるものではなく、同一試料に対する、高精度制御が可能な圧力効果による超伝導の発現として重要な研究成果であり、多くの研究者の注目を集めている。
なお、本研究に関連した、J. Flouquet氏による解説“Antiferromagnetism- Superconductivity Boundary and Disorder” が JPSJのNews and Comments欄に掲載されている。
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