JPSJ 2009年10月号の注目論文
「NMRから見た鉄系超伝導体における超伝導対称性
---Ba0.6K0.4Fe2As2のフルギャップ超伝導---」
昨年2月に東工大細野教授グループによって発見された新鉄系超伝導体を巡る研究が世界中を巻き込んで進行している。
新しい超伝導の解明には、その出現機構に密接に関連する「超伝導ギャップ」を知ることが重要である。最近、大阪大学と産業技術総合研究所の研究者グループは、Ba0.6K0.4Fe2As2について詳細な核磁気共鳴(NMR)実験を行ったところ、従来型のBCS超伝導体と同様にフェルミ面上全体で電子状態が消失するフルギャップが出現していること(より正確には、二つのバンドに大きさの異なる2つのs波対称ギャップをもち、それらの秩序変数が+、-逆符号となる超伝導状態)を強く示唆する結果を得た。
今後、関連物質において系統的な測定を行うことにより、鉄系超伝導体の普遍的なメカニズムが明らかになっていくものと期待される。