JPSJ注目論文

JPSJ 2010年2月号の注目論文

「強磁性と超伝導の微視的な共存」

近年、BCS理論では相反する状態と考えられてきた強磁性と超伝導が共存している強磁性超伝導体が見出されている。
中でも、ウラン系化合物UCoGeは、通常は磁場によって抑制されるはずの超伝導が、逆に磁場によって安定化されるという「強磁性超伝導体」特有と考えられる振舞いを示すことがつい最近報告されている。今回、京都大学、名古屋大学、東北大学の研究者からなる研究グループは、UCoGeについて、Co核の核四重極共鳴(NQR)という微視的な測定から、Co核の位置に強磁性秩序による内部磁場と超伝導によるエネルギーギャップとの効果が共存すること、すなわち、強磁性と超伝導がミクロレベルで共存していることを明らかにした。
新奇な「強磁性超伝導状態」の全容解明に向けた今後の研究が期待される。

なお、本研究に関連した、神部振作氏による解説”How Does Superconductivity Marry Ferromagnetism? ?The Self-Induced Quantized Vortex Could Be the Answer?”がJPSJ のNews and Comments欄に掲載されている。
どなたでもアクセスできるので、ご参照いただきたい。


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「コンパクトで試料室体積が大きい高圧セル:
NMRなど新たな測定手段が超高圧域(~9万気圧)でも可能に2」

高圧実験は、圧力印加によって物質内の原子間、電子間の平均距離を制御し、超伝導状態や絶縁体・金属転移などを引き起こすことができる有力な実験法として多用されてきた。ところが、これまでの高圧装置では印加する試料室の体積が小さかったため、ミクロなスケールの物性を測定するNMR法などでは精度のよい測定は困難であった。最近、東京大学の研究者を中心とする研究グループはこの困難を克服し、試料体積がこれまでの10-100倍程に大きく、圧力変化が9万気圧まで可能で、さらにNMRによる圧力計を備えた超高圧装置の開発に成功した。この「超高圧」領域では様々な相転移の出現が知られており、開発された高圧装置は多くの物性研究に威力を発揮するものと期待される

なお、本研究に関連した、伊藤正行氏による解説” Recent Development of High-Pressure NMR and NQRExperiments up to 10 GPa”がJPSJのNews and Comments欄に掲載されている。
どなたでもアクセスできるので、ご参照いただきたい。


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