JPSJ注目論文

JPSJ 2010年3月号の注目論文

「カゴ構造と異種電子系が織りなす強相関現象
希土類内包カゴ物質RT2Zn20 (R:希土類, T:遷移金属)」

ミクロなカゴが3次元的に結合した結晶(カゴ物質)は、超伝導や重い電子的挙動、さらに、ラットリングとよばれるカゴ内イオンの大振幅振動など、多彩かつ特異な強相関現象を示すことから、最近、活発な研究が進められている。今回、広島大学の鬼丸・高畠両氏の研究グループは、希土類イオンをカゴに内包する金属間化合物RT2>Zn20 (R=La, Pr, T=Ru, Ir)>の純良試料の育成に成功し、超伝導だけでなく構造相転移や重い電子的挙動を見出した。RT2X20 (X=Al, Zn)は、その結晶構造から、電気・磁気多極子を秩序変数とした相転移現象の発現も予想される。カゴ物質についての理解を深めるうえで重要な物質群になると期待され、RT2X20を含めたカゴ物質の物性解明へ向けた今後の研究が期待される。


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「観測されない状態の変化-URu2Si2の隠れた秩序の正体」

マクロな熱力学量の異常から相転移の発現が強く示唆されるものの、どのような秩序状態なのかが確認できていない低温側の秩序は「隠れた秩序」とよばれる。ウラン化合物URu2Si2で出現する相転移の低温秩序状態がその典型の一つで、1985年に比熱や電気抵抗の異常が観測されて以来長い間議論が続いてきた。今回、この問題に対して、神戸大学、フランス原子力庁(CEA -Grenoble)、ジョセフ・フーリエ大学、大阪大学の播磨尚朝、三宅和正、J. フルケの3氏は、ヤーン・テラー歪などの格子歪みも伴わずに、電子の電荷分布の空間対称性だけが低下した秩序状態が出現しているとの答えを提起した。
これまでに知られていなかった相転移描像であり、これが検証されれば、URu2Si2の物性に関する新たな知見を与えるに留まらず、相転移の物理に新たな1ページを記すことになるものと期待される。

なお、本研究に関連した、網塚浩氏による解説”A New Type of Electronic Ordering without Violation of Crystal Symmetry ― Has the Mystery of the Hidden Order in URu2Si2 Finally been Solved? ―”がJPSJ のNews and Comments欄(http://dx.doi.org/10.7566/JPSJNC.7.04) に掲載されている。
どなたでもアクセスできるので、ご参照いただきたい。


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