JPSJ 2011年10月号の注目論文
「CrやVによるFeの磁性増大」
永久磁石はハードディスクドライブをはじめとするエレクトロニクス機器や、ハイブリッドカーの駆動モータなど様々な場面で活躍している。Feベース永久磁石材料では、強磁性体であるFeに第2、第3の成分を添加することで磁石としての性能が向上している。例えば『世界最強の磁石』と呼ばれるNdFeB磁石では、Feに添加されたNdが磁気異方性を高める役割を果たしており、さらにBを加えると磁化、キュリー温度、磁気異方性ともに向上している。この研究では、Feに少量のCrもしくはVを添加すると飽和磁化は下がるもののキュリー温度が増加するという実験事実に着目し、このFeの磁性増大のメカニズムを第一原理電子状態計算によって理論的に明らかにした。この研究を発展させれば、高温で高い保磁力を維持するレアメタルフリーな永久磁石材料開発への応用が期待される。