JPSJ 2011年12月号の注目論文
「多孔体中でのヘリウム量子結晶の雪崩的成長と冪乗則」
地震や雪山の雪崩のように間欠的に進行する現象は、多数の要素が複雑に相互作用する系においてしばしば見られる振る舞いである。では量子力学が系の運動を支配する物質においても、同様の現象が見られるであろうか。極低温・高圧力で存在するヘリウム結晶に乱れを導入することにより、この問題にアプローチできる。この研究では、エアロジェルと呼ばれる多孔質物質中でのヘリウム量子結晶が、極低温で間欠的・雪崩的に成長することが観測された。
「100 T超の高精度磁化測定に成功」
―未知なる新物質の物性研究に新たな道―
1930年初頭の本多光太郎博士によるKS鋼の発見以来、磁性研究は日本の伝統お家芸である。磁気物性の理解は、磁性体の研究に留まらず、広く、超伝導体、金属、半導体などの様々な分野で物性を理解する上でも益々その重要性を増している。米国、ドイツ、中国でも非破壊的に100T級のパルス磁場を発生させる技術開発が進んでいるが、高精度の磁化測定は出来ていない。この研究では、特殊な磁化検知コイルの開発に成功し、液体ヘリウム温度で103 Tまでの磁化の高精度の絶対値測定を成功させた。