JPSJ 2013年2月号の注目論文
153Kでゼロ抵抗をともなう超伝導状態を達成
現在常圧下においてもっとも高い超伝導転移温度Tcを持つ物質はHgBa2Ca2Cu3O8+δ(Hg-1223)である。産総研と理研の共同研究チームは、優れた超高圧技術を試料合成、電気抵抗測定の両方に適用することで、Hg-1223の圧力下のTcの振る舞いを精密に観測することに成功した。Tcは最も高い測定圧力、P=15GPaにおいて153Kに達した。これは史上最高温度のゼロ抵抗をともなう超伝導転状態の観測である。
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Zero Resistivity above 150 K in HgBa2Ca2Cu3O8+δ at High Pressure
Nao Takeshita, Ayako Yamamoto, Akira Iyo, and Hiroshi Eisaki: J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 023711
比熱の磁場方位依存性から紐解くUPt3のスピン三重項超伝導
非常に珍しいスピン三重項超伝導の実現が確実なUPt3について比熱の磁場方位依存性が徹底的に調べられた。その結果、c軸から30度以内の磁場角度範囲で超伝導が異常に壊れやすくなっていることが明らかになった。また、超伝導ギャップ構造の特定を目指して行われた回転磁場中比熱測定の結果、最近有力視される2回対称性を有するスピン三重項超伝導ギャップは比熱では奇妙なことに検出されないことが分かった。これらの結果は、UPt3の超伝導が未だベールに包まれた側面を持つことを浮き彫りにしており、今後の研究に新たな指針を与える成果として研究者の注目を集めている。
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Anomalous Field-Angle Dependence of the Specific Heat of Heavy-Fermion Superconductor UPt3
Shunichiro Kittaka, Koji An, Toshiro Sakakibara, Yoshinori Haga, Etsuji Yamamoto, Noriaki Kimura, Yoshichika Ōnuki, and Kazushige Machida: J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 024707