JPSJ 2014年1月号の注目論文
超伝導の内部で実現する不思議な磁気秩序 〜「Q相」をめぐって〜
希土類元素を含む重い電子系超伝導体において、超伝導相内部で「Q相」と呼ばれる特殊な磁気秩序状態が見つかった。「Q相」によるフェルミ面のネスティングが、異方的な超伝導ギャップを形成していることが分かった。磁性が絡んだ超伝導発現機構の解明および新物質開発につながるものと期待される。
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Magnetic Order in Ce0.95Nd0.05CoIn5: The Q-Phase at Zero Magnetic Field
Stéphane Raymond, Scheilla M. Ramos, Dai Aoki, Georg Knebel, Vladimir P. Mineev, and Gérard Lapertot, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 013707 (2014).
キャリア濃度の精密制御により見いだされたBiS2系層状超伝導体における絶縁体–超伝導転移
近年、新しい低次元超伝導体としてR(O,F)BiS2 (R:希土類元素) 等のBiS2伝導層を有する系が注目されているが、これらはアニオン置換によるキャリア濃度及びバンド構造の変化に不確定性が伴うために、超伝導発現に関する定量的な議論は遅れていた。東京大学を中心とする研究グループは最近、新規なキャリア供給層を有する(Sr,La)FBiS2が、BiS2層への理想的な電子ドープを可能とする物質であることに着目し、キャリア濃度の精密制御を行った。エックス線吸収分光や輸送・熱力学特性などの測定結果から、キャリア濃度に非常に敏感な絶縁体-超伝導の臨界状態が形成されていることを見出し、BiS2系ではじめて詳細な超伝導相図の解明に至った。
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Insulator-to-Superconductor Transition upon Electron Doping in a BiS2-Based Superconductor Sr1−xLaxFBiS2
Hideaki Sakai, Daichi Kotajima, Kosuke Saito, Hiroki Wadati, Yuki Wakisaka, Masaichiro Mizumaki, Kiyofumi Nitta, Yoshinori Tokura, and Shintaro Ishiwata, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 014709 (2014).
光格子中のイッテルビウム原子の高感度その場発光イメージング
近年めざましい発展をとげているレーザー冷却された極低温中性原子気体研究に おける1つの重要な技術に原子の高感度観測がある。最近、京都大学大学院理学研究科のグループは、光格子中のイッテルビウムのボソン同位体(174Yb)について、単一原子検出が可能なレベルでの高感度その場イメージングに成功した。豊富な同位体が存在する、超狭線幅光学遷移を有するといったイッテルビウムの特長を鑑みると、この結果は、極低温原子系研究に、新たな可能性を開くものである。
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High-Sensitivity In situ Fluorescence Imaging of Ytterbium Atoms in a Two-Dimensional Optical Lattice with Dual Optical Molasses
Kosuke Shibata, Ryuta Yamamoto, and Yoshiro Takahashi, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 014301 (2014).