JPSJ 2014年7月号の注目論文
強磁性臨界ゆらぎによって強められる超伝導
強磁性超伝導体UCoGe(強磁性転移温度TCurie~2.5 K、超伝導転移温度TSC~0.7 K)は強磁性縦ゆらぎが超伝導の発現に重要であることが実験的に明示された最初の超伝導体である。今回、その縦ゆらぎとは直交する結晶軸(a、b軸)に外部磁場を印加したときの強磁性の磁場応答を核磁気共鳴実験より調べ、磁気ゆらぎと超伝導との関係を調べた。磁場をa軸方向に印加した場合は強磁性転移が変化しないのに対し、超伝導の増強されるb軸方向に磁場を印加したときのみ強磁性転移温度が抑制されることを示した。これは磁場により誘起された強磁性臨界ゆらぎにより超伝導が増強されたことを示唆する結果であり、強磁性磁気ゆらぎと超伝導の関連性をより確かにする結果である。
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Relationship between Ferromagnetic Criticality and the Enhancement of Superconductivity Induced by Transverse Magnetic Fields in UCoGe
Taisuke Hattori, Kosuke Karube, Kenji Ishida, Kazuhiko Deguchi, Noriaki K. Sato, and Tomoo Yamamura, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 073708 (2014).
PbFCl型結晶構造を有するAP2-xXx (A=Zr, Hf, X=S, Se)新超伝導体群
PbFCl型結晶構造を有する層状性新超伝導体群AP2-xXx (A=Zr, Hf, X=S, Se)を発見した。AP2-xXxは、A原子のサイズおよびカルコゲンの種類とその置換量より超伝導転移温度(Tc)がドーム状に変化する。なお、TcはA=Zr、X=SeとしたZrP2-xSex (x=0.75)において最高6.3 Kである。AP2-xXxは、端組成(x = 0, 2)において、それぞれPbCl2型およびCdI2型結晶構造を有するが、途中組成でPbFCl型結晶構造が現れるという特徴がある。今後もこの周辺物質でさらなる新超伝導体発見の可能性が期待される。
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New Intermetallic Ternary Phosphide Chalcogenide AP2−xXx (A = Zr, Hf; X = S, Se) Superconductors with PbFCl-Type Crystal Structure
Hijiri Kitô, Yousuke Yanagi, Shigeyuki Ishida, Kunihiko Oka, Yoshito Gotoh, Hiroshi Fujihisa, Yoshiyuki Yoshida, Akira Iyo, and Hiroshi Eisaki, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 074713 (2014).