JPSJ 2014年8月号の注目論文
氷表面の疑似液体層:凸凹構造とその位置変動による再結晶化の繰り返し
氷について,融点以下の温度で表面が融解して生じる液体類似の相は「疑似液体層」(quasi-liquid layer: QLL) とよばれる.大規模な古典分子動力学シミュレーションの結果,このQLLの表面に凸凹があること,その凸部の位置が時間経過と共に変動すること,融点直下では凸部の下にシート状のQLLが現れること,さらに融点より一定程度低い温度では,凸部の変動により薄くなったQLLの下部は融解し,逆に厚くなったQLLの下部は再結晶化することが見いだされた.
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Fluctuating Local Recrystallization of Quasi-Liquid Layer of Sub-Micrometer-Scale Ice: A Molecular Dynamics Study
Yasuhiro Kajima, Shuji Ogata, Ryo Kobayashi, Miyabi Hiyama, and Tomoyuki Tamura, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 083601 (2014).
明らかになった電荷ガラス形成のメカニズム
三角格子を有する有機導体θ-(BEDT-TTF)2X(SCN)4は電子間のクーロン反発のため低温で電荷秩序を形成するが、急冷下ではこの転移は抑制され、電荷が空間的に不均一に凍結した電荷ガラス相が実現する。本研究では、同形の結晶構造を持つ3つのθ型BEDT-TTF塩(X = TlCo, RbZn, CsZn)において、電荷ガラス形成に必要な臨界冷却速度の系統性を調べた。その結果、格子が正三角格子に近づく程、電荷秩序形成に要する時間が長くなり、そのため有限の実験時間においては電荷ガラス相が形成されやすくなることが明らかになった。
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Systematic Variations in the Charge-Glass-Forming Ability of Geometrically Frustrated θ-(BEDT-TTF)2X Organic Conductors
Takuro Sato, Fumitaka Kagawa, Kensuke Kobayashi, Akira Ueda, Hatsumi Mori, Kazuya Miyagawa, Kazushi Kanoda, Reiji Kumai, Youichi Murakami, and Yoshinori Tokura, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 083602 (2014).