JPSJ注目論文

JPSJ 2015年4月号の注目論文

反対称スピン軌道相互作用の量子臨界磁気ゆらぎによる「くりこみ」効果

 反対称スピン軌道相互作用の役割は、反転対称中心を持たない結晶での非自明な超伝導状態やトポロジカル絶縁体における表面状態の性質を決めるものとして、この10年余り注目を集めている。一方,種々の強相関電子系において圧力などの外部パラメタを変化させて磁気秩序などが消失したときに生じる量子臨界現象はこの20年余り活発な研究が行われてきた。ごく最近,量子臨界磁気ゆらぎが反対称スピン相互作用に顕著な影響を与えることが理論的に示され、実験で観測できる可能性が指摘された。

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原論文は以下よりご覧いただけます
Deformation of the Fermi Surface and Anomalous Mass Renormalization by Critical Spin Fluctuations through Asymmetric Spin–Orbit Interaction
Yukinobu Fujimoto, Kazumasa Miyake, and Hiroyasu Matsuura, J. Phys. Soc. Jpn. 84, 043702 (2015).



鉄系超伝導体における電子軌道対称性の破れ

 鉄系超伝導体では、格子と軌道、磁性の自由度が複雑に絡み合っている系であることが認識されている。それらがどのように関係しあって、構造転移や反強磁性秩序、また超伝導が起こっているのかについて多くの研究者の関心が注がれている。今回、単結晶BaFe2(As0.96P0.04)2を用いて微視的観点から(FeAs)面内の異方性が詳細に調べられた。その結果、構造転移よりもはるか上の温度からAsサイトの4px, 4py軌道の縮退が解けており、160 K以下でその分裂が大きくなることが見出された。この結果は、構造転移や反強磁性秩序の起源を考える上からも重要な内容である。

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原論文は以下よりご覧いただけます
Emergence of Orbital Nematicity in the Tetragonal Phase of BaFe2(As1−xPx)2
Tetsuya Iye, Marc-Henri Julien, Hadrien Mayaffre, Mladen Horvatić, Claude Berthier, Kenji Ishida, Hiroaki Ikeda, Shigeru Kasahara, Takasada Shibauchi, Yuji Matsuda, J. Phys. Soc. Jpn. 84, 043705 (2015).




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