JPSJ 2015年5月号の注目論文
有機導体で見られたヘリカル表面状態を伴う新しい量子ホール状態
層状有機導体α-(BEDT-TTF)2I3はグラフェンに続く第2の固体中ディラック電子系であり、そこでは電子は相対論的な運動法則に従う。この物質の強磁場下の層間電気伝導の異常な振舞いを説明するモデルとして、ディラック電子系特有の磁場中ゼロエネルギー準位のスピン分裂に起因する「量子ホール強磁性」状態の可能性について考察した。具体的には、この状態特有の試料側面に形成される「ヘリカル表面状態」の伝導特性を理論的に調べ、実験との整合性を確認した。これはグラフェンにおける「量子ホール絶縁体」状態とは対照的な、新しいトポロジカル電子状態である。
詳しい説明はこちらから
原論文は以下よりご覧いただけます
Surface Transport in the ν = 0 Quantum Hall Ferromagnetic State in the Organic Dirac Fermion System
Toshihito Osada, J. Phys. Soc. Jpn. 84, 053704 (2015).
量子極限状態における励起子のBCS的状態実現の可能性
パルス強磁場下における精密な電気伝導および磁化測定によって、53 T以上の強磁場下でグラファイトが量子極限状態にあるとみなせる実験結果が示された。量子極限状態で期待されるバンド構造について考えると、この磁場領域で観測されている特異な電気伝導は電子正孔対(励起子)のBCS的状態である可能性が高い。理論的提案から約半世紀の間謎に包まれていた励起子のBCS的状態の研究が新展開を迎えようとしている。
詳しい説明はこちらから
原論文は以下よりご覧いただけます
Possible Excitonic Phase of Graphite in the Quantum Limit State
Kazuto Akiba, Atsushi Miyake, Hiroshi Yaguchi, Akira Matsuo, Koichi Kindo, Masashi Tokunaga, J. Phys. Soc. Jpn. 84, 054709 (2015).