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AAPPS-JPS Award

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第2回(2024年)AAPPS-JPS Award の受賞者を以下の5名に決定しました。

第2回(2024年)AAPPS-JPS Award の受賞者を以下の5名に決定しました。

【授賞式の様子】
2024年9月18日
北海道大学 札幌キャンパス 高等教育推進機構 Sky HALL(大講堂)

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授賞理由

※50音順/敬称略

氏 名 2024_kobayashi.jpg
小林 達哉 (こばやし たつや)
所属先 自然科学研究機構 核融合科学研究所 准教授
業績名 超高温プラズマにおける非線形創発現象の実験研究
授賞理由 小林達哉氏は、超高温プラズマ中の構造形成を伴う非線形創発現象に関する実験研究において、顕著な業績を上げた。磁場を用いた粒子閉じ込めを行う核融合プラズマでは、乱流による熱や粒子の輸送が問題となっている。クーロン散乱による拡散過程に加え、電場の揺動を引き起こす乱流は磁場を横切る荷電粒子の集団運動を創発し、閉じ込め領域外部への輸送を促進する。一方で、集団運動の非線形効果により対称性・秩序性が高い運動成分が卓越すると、プラズマは「高閉じ込め」状態に遷移する。小林氏は、共同研究者と共に開発した高分解能計測・解析システムを駆使して乱流中の秩序構造を見出し、プラズマの不均一性(非平衡性)との関係を明らかにすることで多くの重要な成果を挙げた。さらに、プラズマ周辺部のプラズモイドと放射強度に間に見られる自励振動の非線形性に着目し、捕食者-被食者関係を用いたモデル化に成功している。一連の成果は、フュージョンエネルギーの実現に重要な科学的知見となるだけでなく、天体・宇宙プラズマから半導体プロセスプラズマに普遍的に見られる揺らぎ構造形成機構の解明にも寄与することが期待される。

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氏 名 2024_sakai.jpg
酒井 明人 (さかい あきと)
所属先 東京大学 理学研究科物理学専攻 講師
業績名 四極子近藤格子系および幾何学的フラストレート磁性体等における従来型磁気量子臨界点の枠組みを超えた異常金属
授賞理由

酒井明人氏は、強相関電子系およびトポロジカル磁性体を用いた量子物性研究を先導する若手研究者である。同氏は、従来の磁気量子臨界点の理解の枠組みを、四極子秩序やフラストレート磁性金属、トポロジカル磁性体などに拡張することで、新しい量子臨界現象の研究を進めてきたが、その中で、四極子近藤格子系の実験的研究の舞台となる新化合物を見出し、特異な物性を実験的に解明したことが評価され、本章の受賞に繋がった。酒井明人氏の業績は、優れた物質開発と実験技術を基盤とし、物質科学における長年の問題に新しい展開をもたらしたものであり、その広範な影響と展開に照らして、顕著な功績であると考える。

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氏 名 2024_tokuda.jpg
德田 順生 (とくだ じゅんせい)
所属先 基礎科学研究所 理論宇宙物理センター 博士研究員
業績名 散乱振幅を用いた量子重力理論と低エネルギー物理間の整合性探査
授賞理由 重力の首尾一貫した量子論はいまだに知られていない。素粒子の標準模型は、重力の影響が顕著になる高エネルギーでは修正をせまられ、重力を含んだ理論に統合されると考えられる。その意味で、現状の標準模型はまだ見ぬ理論の低エネルギー有効理論と考えるべきだが、真の理論を知らない現段階でも標準模型がみたすべき条件を導きだすことができる。徳田氏らは、粒子の散乱振幅に対する条件を導き、光子光子散乱がこの条件を満たすためには非摂動効果が重要になることをしめした。この業績は、標準模型と重力との関係にせまるもので、AAPPS-JPS Award にふさわしいものと高く評価された。

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氏 名 2024_nagata.jpg
永田 夏海 (ながた なつみ)
所属先 東京大学大学院 理学系研究科 素粒子論研究室 助教
業績名 暗黒物質および宇宙素粒子物理学の理論的研究
授賞理由 永田夏海氏は、カシオペアA中性子星の表面温度観測値との整合性を解析することで、アクシオン崩壊定数についてSN1987Aから与えられているものよりも強い制限を得た。また、中性子星の冷却過程においてβ平衡から外れることで生じる内部加熱効果が、中性子星の表面温度観測を用いた暗黒物質の探索可能性に大きな影響を与えうることを示した。さらに、中性子星の重力加速度が暗黒物質粒子を高エネルギーで中性子星に衝突させることから、電弱多重項暗黒物質を非弾性散乱過程を通じて効率よく探索しうることを指摘するなど、明らかに重要な成果をもたらしてきており、今後もこの分野の第一線で活躍することが大いに期待される。

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氏 名 2024_hayakawa.jpg
早川 修平 (はやかわ しゅうへい)
所属先 東北大学大学院理学研究科 助教
業績名 二重ストレンジネスをもつ原子核の研究
授賞理由

核力を理解する上でダブルハイパー核のデータは大きな貢献をするものであり、長年挑戦が続けられてきた。早川氏のグザイハイパー核の質量(グザイ束縛エネルギー)の高精度決定は、グザイハイパー核研究のマイルスト―ンとなる特に意義の高いものである。
この成果の元となった高純度Kビームに関し、早川氏はスぺクトロメータ系を担当とし、その貢献は大きい。この成果をもとに更なる発展が期待でき、受賞に値すると考える。

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第2回(2024年)日本物理学会AAPPS-JPS Award選考経過報告

第79期AAPPS委員会*

本選考委員会は日本物理学会AAPPS委員を中心構成されている。取り決めに従って、本年日本から推薦されたC. N. Yang賞候補者の中から受賞者を選ぶため、C. N. Yang賞への応募書類をもとに選考を行った。今回の候補者は6名であり、選考委員で応募書類を評価し、9月20日までに事前評価を行った。
選考委員会は2023年10月5日にオンラインにて開催された。出席できなかった委員からの意見は事前に受け取り、当日は出席者からの講評を聞きながら、それぞれの応募者について採択の可否を議論した。評価に際しては、これまでの業績とそこから期待される将来性に的を絞って議論を行った。その後、さらに情報が必要と判断された候補者に対して推薦者や研究関係者からの意見を集め、それらをもとに委員間での議論を電子メールにて行った。その結果、5名の候補者がAAPPS-JPS Award受賞者としてふさわしいとの結論に達した。

*第79期AAPPS委員会 委員

委員長 三原 智
委 員
(日本物理学会)
須藤 彰三、田中 貴浩、所 裕子、能町 正治、橋本 省二、野尻 浩之
村尾 美緒、山本 量一、吉田 善章 
(応用物理学会)
沈 青、中塚 理