JPSJ

Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)は、日本物理学会が刊行する月刊誌で、創刊以来、レベルの高い論文を出版してきました。各号は、Full Papers, Letters等のオリジナル論文から構成され、随時、Invited Review Papers, Special Topicsを掲載しています。最新の論文は、オンライン公開後、約1か月間無料でご覧いただけます。[> JPSJホームページ]

注目論文 (Papers of Editors' Choice)

  • 毎月の編集委員会では、注目論文(Papers of Editors' Choice)を選んでいます。その日本語による紹介文を日本物理学会誌とJPSJ注目論文に掲載しています。注目論文はオンライン公開後1年間無料で閲覧できます。関連した話題についての解説がJPSJホームページの「News and Comments」覧に掲載される場合もあります。

JPSJニュースレター

  • 年次・秋(春)季大会の開催にあわせてニュースレター(日本語)を発行しています。
    JPSJニュースレター最新号(No. 40) をウェブ公開しました。

    また、これまでに発行したニュースレターはこちらからご覧いただけます。

最新のJPSJ注目論文

強トロイダル状態は、空間反転対称性と時間反転対称性が同時に破れている特殊な物質状態であり、光の入射方向の反転により吸収が変わる方向二色性といった多彩な物理現象を引き起こす。それゆえ、強トロイダル状態を如何にして実現するかは興味ある問題である。今回、PbMn2Ni6Te3O18の反強磁性相において、強トロイダル状態の形成を示す方向二色性が観測された。この結果と対称性の議論から、結晶構造の回転歪みと、反平行スピン対をベースとした"偽キラル"な反強磁性の組み合わせが、強トロイダル状態を実現する新たな指針となることが示された。

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原論文は以下からご覧いただけます
Ferrotoroidic State Induced by Structural Rotation and Falsely Chiral Antiferromagnetism in PbMn2Ni6Te3O18
Ryoya Nakamura, Ippo Aoki, and Kenta Kimura, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 063703 (2024).


長い間、強磁性特有の現象だと思われてきた異常ホール効果は、最近になって反強磁性を主体とする物質でも観測されている。この現象にブレイクスルーをもたらしたMn3SnやNbMnPなどがこれに該当し、それらの磁気構造の反強磁性成分が強磁性と同じ磁気点群に属することが鍵となっている。その異常ホール効果の機構として波数空間のベリー曲率が散逸に依らない異常ホール伝導度を与える内因性の機構が有力視されていた。今回、NbMnPの純良単結晶の作製が可能となり、異常ホール効果の試料依存性を調べることにより、散逸に依らない異常ホール伝導度が確認された。本研究により反強磁性由来の異常ホール効果が内因性の機構で生じている実験的確証が得られたと言える。

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Intrinsic Anomalous Hall Effect Arising from Antiferromagnetism as Revealed by High-Quality NbMnP
Yuki Arai, Junichi Hayashi, Keiki Takeda, Hideki Tou, Hitoshi Sugawara, and Hisashi Kotegawa,
J. Phys. Soc. Jpn. 93, 063702 (2024).

不純物や不均一性を全く有さない超伝導体が磁場下に置かれたときの低温相である渦糸固体相では、電流に伴う渦糸の散逸運動により電気抵抗は有限であるというのが通常の理解であった。しかし実際の十分良質な単結晶の電気抵抗データは、渦糸液体から固体相への凍結が「超伝導」転移、つまり電気抵抗消失の原因であることを示している。銅酸化物超伝導体などで以前から見られていたこの一見奇妙な現象が今回、繰り込まれた超伝導揺らぎの理論の拡張による詳細な計算により理解できるようになった。

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原論文は以下からご覧いただけます
Vanishing of Resistivity upon Freezing of Vortex Liquid in Clean Superconductors
Naratip Nunchot and Ryusuke Ikeda, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 054712 (2024).

磁性材料の巨視的特性の評価を行うために、ランダウ・リフシッツ・ギルバート(LLG)方程式で用いる交換スティッフネス定数A(T)を第一原理計算で求めた。本研究では、実用材として代表的なFe20Ni80(パーマロイ)とFePtを取り上げたが、両系ともに室温におけるA(T)の計算結果は測定値をよく再現しており、FePtについてはA(T)に大きな方位依存性が存在することなど興味深い結果を示している。

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原論文は以下からご覧いただけます
Evaluation of the Exchange Stiffness Constants of Itinerant Magnets at Finite Temperatures from the First-Principles Calculations
Akimasa Sakuma, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 054705 (2024).

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