第3回(2022年)米沢富美子記念賞の受賞者を以下の2名に決定しました。
第3回(2022年)米沢富美子記念賞の受賞者を以下の2名に決定しました。
授賞理由
※50音順/敬称略
氏 名 | 岩田 夏弥(いわた なつみ) |
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所属先 | 大阪大学 高等共創研究院 准教授 |
業績名 | 高強度光が駆動する高エネルギー密度プラズマダイナミクスの理論的研究 |
授賞理由 |
相対論的高強度のレーザー光を物質に照射すると、物質は電離し高エネルギー密度のプラズマとなる。照射面は10億気圧に至る高い光圧で押し込まれ、光による相対論的電子加速と高温プラズマ加熱が同時進行する。このような極限的な条件下で生じる現象を解明することがプラズマ物理の重要課題となる。 |
氏 名 | 高瀬 恵子(たかせ けいこ) |
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所属先 | NTT物性科学基礎研究所 主任研究員 |
業績名 | 新奇半導体材料における量子輸送およびスピン軌道相互作用制御の研究 |
授賞理由 |
高瀬氏は、グラフェンやIII-V属半導体ナノワイヤなど半導体材料における量子効果素子の量子物性の解明を実験および理論計算の両面から行ってきた。グラフェン研究においてはウェハ・スケールのグラフェンをシリコンカーバイド(SiC)基板上にエピタキシャル成長することに成功し、高品質SiC上グラフェン電界効果トランジスタ(FET)を実現した。この素子に対する量子輸送測定と、理論モデルの構築により、エピタキシャルグラフェンの量子物性解明に貢献した。その後、高瀬氏は、MOVPE(有機金属化学気相成長)法によるナノワイヤ成長の材料研究者と協働し、InAsやInSbなどIII-V属半導体ナノワイヤを用いたFET作製に成功した。これらの半導体は、スピン軌道相互作用が大きいことから、電荷ではなくスピンでトランジスタのON/OFFを制御するスピントロニクス分野への応用が期待されているものである。高瀬氏らの作製したFETは、低温・強磁場などの極限環境下での詳細な測定や理論計算との比較から、大きいスピン軌道相互作用を低ゲート電圧で制御可能であることが明らかになっており、FETの将来の省エネルギー化に繋がることが期待される。 |
第3回(2022年)日本物理学会 米沢富美子記念賞選考経過報告
日本物理学会第3回米沢富美子記念賞選考委員会 *
2021年6月の理事会で第3回米沢富美子記念賞の選考委員会委員10名が決定された。同年9月16日より領域・支部等に受賞候補者の推薦を求め、11月30日の締め切りまでに3名の推薦を受けた。昨年までの選考委員会から繰り越された1名を加えた4名の候補者の各々について5名の委員が推薦書、業績リスト、主要論文の閲読を行い、閲読結果を選考委員会内で共有した。2022年1月28日の選考委員会では欠席委員の査読結果も参考に8名の選考委員により受賞候補者の選考を進めた。各候補者について、研究業績の卓越性、インパクトの大きさや将来の展望、候補者の貢献度、また、物理学教育・アウトリーチ活動状況、本会活動に対する貢献などについて詳細に検討した。慎重に議論を進めた結果、上記2名の候補者が第3回米沢富美子記念賞の授与にふさわしいとの結論を得て理事会に推薦し、2022年2月の理事会で正式決定された。今回の選考では素粒子・原子核・宇宙分野からの推薦が無かった。該当分野の奮起を期待したい。
*第3回米沢賞選考委員会
委 員 長:延與 秀人
副委員長:川上 則雄
幹 事:田村 裕和
委 員:今井 正幸、須藤 靖、瀧川 仁、戸田 泰則、野尻 美保子、古川 はづき、松尾 由賀利