第79期活動報告
次世代人材育成・社会連携活動の推進
物理学の研究・教育を通して、次世代の学術界だけでなく産業界をも担う人材育成の場を提供することは本会の最大の使命の一つであり、産業界や教育界と共同して、社会との関わりを一層強めるための活動を行っている。その観点から2018年度に「次世代人材育成プロジェクト」を立ち上げ、2019年度に新設した次世代人材育成・社会連携委員会を中心に、協賛企業とさらに緊密な連携を展開している。特に、下記のJr.セッションでは、協賛企業を募り、そのうちの3社の企業名を冠した冠賞を、優秀な発表をしたチームに授与することを決め、2024年3月の発表会から実施した。それを含め、次世代人材育成プロジェクトでは、i) Jr.セッション、ii) オンライン物理講話、iii) キャリア支援イベント、iv) 自然の不思議物理教室、v) 物理教育シンポジウム、vi) 高校物理の授業に役立つ基本実験講習会、の6つの事業を展開してきたので、本年の活動報告を以下に述べる。
6-1) Jr.セッション
Jr.セッションは、Jr.セッション委員会が中心になって準備と実施をおこなってきた。次世代人材育成・社会連携委員会では、企業等の協賛を得て主に財政的な面からこの事業を支援している。現在は、コロナ禍の影響によってオンライン形式で開催しているが、現地開催を希望する声も多いので、将来的には現地開催形式に戻したいと願っている。その場合、会場費などの負担が高額になる。そのため、2022年には、従来の最優秀賞や優秀賞などの授与のほかに、一定額の協賛金をいただける協賛企業の名前を冠した冠賞を創設することにした。そして、2024年3月開催のJr.セッションから3社からの冠賞の授与を行った。その後、さらに1社が加わり、2025年3月のJr.セッションで4社からの冠賞授与となる予定である。また、最優秀賞および優秀賞受賞チームには会友の無料招待を行い、オンライン物理講話などへの参加を促し、理科・物理に対する興味関心を喚起することにした。その後に理事会の判断で、賞に関わらず、学部学生以下の会友全員は会費無料とすることが決まり施行されている。(2024年5月から)
6-2) オンライン物理講話
長く対面形式で続けられてきた年に一度2日間にわたり行われる「科学セミナー」が2020年に新型コロナの影響により開催中止となったのを契機に「科学セミナー」を衣替えし、オンライン参加型講演会である「オンライン物理講話」を隔月で開催している。「オンライン物理講話」は、広い分野から最先端の研究について、他分野の研究者や学生にわかる程度の難易度で1人の講師が1時間半の持ち時間で行うオンライン講演会である。
2020年12月に第一回が行われ、2021年に5回、2022年、2023年共に6回実施した。2023年は物性から素粒子宇宙分野に加え、機械学習や量子コンピュータといったテーマで講師をお招きし、平均367名の日本の各地域や海外からの参加者があり、好評を得た。過去3年の実績から分かるように「オンライン物理講話」は物理学の啓蒙活動として重要度が増しており、今後はより幅広いターゲットに向けた講演を充実させ、広報活動により学会員以外への認知度を高めていく。2024年7月から毎月開催に変更し、充実を図る予定である。
6-3) キャリア支援イベント
キャリアパス関係事業として2018年までキャリア支援センターが中心となり行ってきた理工系(物理関連分野)人材のためのキャリアフォーラムおよび私立中高向け「理系教員選考会」を終了し、代わって次世代人材育成・社会連携委員会が開催する年会・大会でのキャリアパス展示会を充実させてきた。新型コロナ禍のためにこのイベントは中止となっているが、2023年9月の年次大会(東北大学)でもキャリア展示・ランチョンセミナー等の希望がなかった。2024 年3 月オンライン春季大会で開催されたインフォーマルミーティング「領域横断若手・学生会員交流会」では、キャリア支援を望む若手会員からの声が上がったので、2024年9月の年次大会ではキャリア展示・ランチョンセミナーを復活させるべく、企業・研究所等に呼びかける。今後も、学生会員・若手会員の声を聴きながら、キャリア支援の在り方を再構築する予定である。
6-4) 若手・学生会員研究グループの支援
2023年において、若手・学生会員が自主的に活動している研究グループの調査を行い、活動の実態を把握するとともに、学会に対する要望などを調査した。それに基づき、グループの広報を支援するため、グループの簡単な紹介とホームページリンク先をまとめたサイトを当会ホームページ上で公開した。また、2024 年3 月オンライン春季大会でインフォーマルミーティング「領域横断若手・学生会員交流会」を開催して、若手・学生会員からの要望等を調査し、さらに支援を拡げていく予定である。
6-5) 物理教育関連事業
物理教育関連事業に関しては、物理教育委員会の活動報告書を参照してください。