JPSJ 2017年2月号の注目論文
メスバウアー回折で結晶サイト選択的スペクトルが測定できる
帝京大学理工学部を中心とする研究グループは,大型放射光施設SPring-8量子科学技術研究開発機構専用ビームラインBL11XUの放射光メスバウアー線源を利用してメスバウアー回折計を開発し,典型的なFe複サイト化合物としてマグネタイト(Fe3O4)を取り上げ,初めて結晶サイト選択的スペクトルの測定に成功した。Aサイト,Bサイトの2つの結晶学的Feサイトに対して,ブラッグ角(θB)が45°に近い666及び10 10 0反射を用いた測定が行われ,それぞれBサイトのみ,Aサイトのみのスペクトルが得られた。
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Crystal-Site-Selective Spectrum of Fe3O4 Obtained by Mössbauer Diffraction
Shin Nakamura, Takaya Mitsui, Kosuke Fujiwara, Naoshi Ikeda, Masayuki Kurokuzu, Susumu Shimomura, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 023706 (2017).
地震の時間間隔分布への新たなアプローチ
地震の時間間隔分布はWeibull分布で近似されることが知られている。しかもその分布はマグニチュードに一定の仕方で依存すること(マルチフラクタル関係)が示唆されており、地震間隔の分布にさらに新たな法則が潜んでいることが予想されるようになってきた。本研究では条件付き確率の満足する基礎方程式を理論的に扱う方法(EET)を提案し、地震カタログを用いた解析によって条件付き確率を決めている二つの相関係数のスケール則を明らかにする。またそれを用いることによりマルチフラクタル関係式が得られることを明らかにする。
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Detailed Analysis of the Interoccurrence Time Statistics in Seismicity Activity
Hiroki Tanaka and Yoji Aizawa:, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 024004 (2017).
キラルな磁性体における非相反なマイクロ波伝搬
空間反転対称性と時間反転対称性が同時に破れた物質においては、電磁波の速度や吸収係数が進行方向の正負で異なる非相反性が生じる場合がある。特にマイクロ波領域では磁気双極子相互作用にもとづく非相反性を利用したアイソレータやサーキュレータが広く普及している。本研究はキラル磁性体CuB2O4のマイクロ波伝搬を詳細に測定することで、従来のマイクロ波非相反性に加え電気磁気効果に由来する非相反性を同時に観測し、その分類を行った。これによりマイクロ波領域における電気磁気効果と非相反性に関して新たな視点をもたらすものと期待される。
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Microwave Magnetochiral Effect in the Non-centrosymmetric Magnet CuB2O4
Yoichi Nii, Ryo Sasaki, Yusuke Iguchi, and Yoshinori Onose, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 024707 (2017).