JPSJ 2017年12月号の注目論文
SnAs伝導層を含む新規層状超伝導体NaSn2As2
層状構造をもつ化合物は、高温超伝導や非従来型超伝導といった魅力的な電子物性が発現する格好の舞台である。特に、新しいタイプの超伝導層の発見は、伝導層やスペーサー層の構造制御により多くの超伝導体を見出す契機となり、低次元超伝導の発展に重要な寄与を果たすものと期待される。最近の研究で、SnAs超伝導層を含む新しい層状超伝導体NaSn2As2が報告された。電気抵抗率および比熱測定により、本物質が1.3 K以下で超伝導状態を示すことがわかった。今後、SnAs伝導層を含む層状化合物において多くの超伝導体が発見され、非従来型超伝導や高温超伝導に関する新しい知見が得られるものと期待される。
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SnAs-Based Layered Superconductor NaSn2As2
Yosuke Goto, Akira Yamada, Tatsuma D. Matsuda, Yuji Aoki, and Yoshikazu Mizuguchi, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 123701 (2017).
乱れたトポロジカル絶縁体:Z2指数の新しい数値計算法
トポロジカル絶縁体、それはバンド絶縁体であるが、その表面には、乱れや相互作用にも影響されず安定に電流が流れる物質である。その理論模型では、トポロジカル不変量と呼ばれるものが非自明な値をとらなければならない。しかし、系に乱れがあると、その値を決めることは数値的にも難しい。特に、トポロジカル不変量の一種であるZ2指数の値を計算する方法は、今までにも数多く試みられてきた。この論文では、非可換微分幾何に基づいたZ2指数の新たな数値計算法を提案し、それを乱れのあるトポロジカル絶縁体の典型的な模型に適用し、転送行列の方法から予想された値を再現してみせている。
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A New Numerical Method for Z2 Topological Insulators with Strong Disorder
Yutaka Akagi, Hosho Katsura, and Tohru Koma, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 123710 (2017).
空間的に離れた零エネルギーマヨラナフェルミオン対による非局所的ブロッキング効果
本論文ではトポロジカル超伝導体における零エネルギーマヨラナフェルミオンは、その本質的な非局所性によって、テレポーテーション的なプロセスを媒介することが可能であることを示した。この効果は、トポロジカル超伝導体の端にある零エネルギーマヨラナフェルミオンのスピンの向きが反対の端における電子トンネルに影響を与える、という非局所的ブロッキング効果に顕著に表れる。
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Non-Local Spin Blocking Effect of Zero-Energy Majorana Fermions
Chongdan Ren, Jianglan Yang, Jin Xiang, Sake Wang, and Hongyu Tian, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 124715 (2017).