JPSJ注目論文

JPSJ 2019年1月号の注目論文: グラフェン系における弱磁場磁気伝導率の公式

グラフェン系における弱磁場磁気伝導率の公式

固体の電気伝導に対する磁場効果は,電流を運ぶキャリアの性質を理解するためだけではなく,応用上も大変重要である.電気伝導率の久保公式を出発点として,磁気抵抗で重要となる伝導率の弱磁場補正,すなわち,磁場の自乗に比例する磁気伝導率の公式が導出された.線形なエネルギー分散を持つグラフェン系の場合には,それは六角形のファインマン図形で表される.最も簡単な近似の計算により,磁気伝導率はゼロエネルギー付近で二つの鋭いピークを持つことが示された.

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Formula of Weak-Field Magnetoresistance in Graphene
Tsuneya Ando: J. Phys. Soc. Jpn. 88, 014704 (2019).

JPSJ 2019年1月号の注目論文: 高強度中赤外光照射による有機強誘電体の超高速誘電制御

高強度中赤外光照射による有機強誘電体の超高速誘電制御

結晶内のプロトン運動を起源とする有機強誘電体において、中赤外域に周波数ピークを持つ100 fsパルス光を用いて結晶中のプロトン振動を励起させ、そのときに生じる強誘電性の変化を時間分解第二次高調波発生(SHG)測定により調べた。その結果、試料から放射されるSHG強度が、励起に用いた中赤外パルスの時間幅(約100fs)内で最大で18%程度増強する現象が観測された。これは、照射した励起パルスの時間幅の間だけプロトン振動の中心位置が平衡状態からシフトし、それが結果として系の強誘電性の平均的な増大を引き起こしたためと考えられる。

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Ultrafast Control of Ferroelectricity with Dynamical Repositioning Protons in a Supramolecular Cocrystal Studied by Femtosecond Nonlinear Spectroscopy
Tsugumi Umanodan, Keisuke Kaneshima, Kengo Takeuchi, Nobuhisa Ishii, Jiro Itatani, Hideki Hirori, Yasuyuki Sanari, Koichiro Tanaka, Yoshihiko Kanemitsu, Tadahiko Ishikawa, Shin-ya Koshihara, Sachio Horiuchi, and Yoichi Okimoto: J. Phys. Soc. Jpn. 88, 013705 (2019).

JPSJ 2019年1月号の注目論文: f電子系Eu化合物における磁気スキルミオン格子の形成

f電子系Eu化合物における磁気スキルミオン格子の形成

本論文では, キラルな結晶構造をもつEuPtSiについて単結晶中性子回折実験を行い,ゼロ磁場及び磁場誘起相であるA相の磁気構造を明らかにした.ゼロ磁場では結晶構造を反映したキラルならせん磁性を示すが,磁場下のA相では,周期長は保ちながら印加磁場に垂直散乱面にピークが移動し,6回対称の磁気散乱パターンへと変化することが示された.この結果は,磁気スキルミオンの典型物質であるMnSiの振る舞いと酷似している.A相の特徴的な安定領域,ホール抵抗の増大と合わせて考えると,EuPtSiがf電子系で初となる磁気スキルミオン格子を持つ物質であることを示している.

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原論文は以下からご覧いただけます
Unique Helical Magnetic Order and Field-Induced Phase in Trillium Lattice Antiferromagnet EuPtSi
Koji Kaneko, Matthias D. Frontzek, Masaaki Matsuda, Akiko Nakao, Koji Munakata, Takashi Ohhara, Masashi Kakihana, Yoshinori Haga, Masato Hedo, Takao Nakama, and Yoshichika Ōnuki, J. Phys. Soc. Jpn. 88, 013702 (2019).