JPSJ注目論文

JPSJ 2019年5月号の注目論文: 転位線に沿って現れる永久電流

転位線に沿って現れる永久電流

磁場の無い単連結構造のワイル半金属において、永久電流(平衡状態における電荷流)に関する新しい知見が得られた。螺旋転位をもつ結晶構造では転位線に沿って一次元的なカイラル状態が現れ、それによって永久電流が引き起こされることを理論的に示した。また試料内において永久電流がたどる道筋を示すループ構造が明らかにされた。

詳しい説明はこちらから
原論文は以下からご覧いただけます。
Persistent Current due to a Screw Dislocation in Weyl Semimetals: Role of One-Dimensional Chiral States
Kentaro Kodama and Yositake Takane, J. Phys. Soc. Jpn. 88, 054715 (2019).

JPSJ 2019年5月号の注目論文: 活性・不活性振動子混在系の格子ラプラシアン結合によるマクロ振動抑制- 一般化自由エネルギーを用いた近似的アプローチ-

活性・不活性振動子混在系の格子ラプラシアン結合によるマクロ振動抑制 -一般化自由エネルギーを用いた近似的アプローチ-

活性・不活性な非線形振動子が混在したがいに結合したときに、活性振動子の組(活性組)が勝利し不活性振動子の組(不活性組)を巻き込んだマクロな振動が生じるのか、それとは逆に不活性組が勝利し振動がピタリと止まるのか、という問題を解析した。複素ギンツブルグ・ランダウ方程式の離散形を基本式とし、二組近似(振動子集団を活性組と不活性組の二組に分け、組内は均質だとする)を用いることで一般化自由エネルギーを二変数数関数として解析的に求め、不活性組が勝利する条件を導出した。てんかん発作抑制の数理解析への応用が論文後半に示されている。

詳しい説明はこちらから
原論文は以下からご覧いただけます。
Suppression of Macroscopic Oscillations in Mixed Populations of Active and Inactive Oscillators Coupled through Lattice Laplacian
Ikuhiro Yamaguchi, Takuya Isomura, Hiroya Nakao, Yutaro Ogawa, Yasuhiko Jimbo, Kiyoshi Kotani, J. Phys. Soc. Jpn. 88, 054004 (2019).

JPSJ 2019年5月号の注目論文: スパースモデリングを用いた原子核密度の解析手法

スパースモデリングを用いた原子核密度の解析手法

中性子線回折データをスパースモデリング(SM)により解析することで、これまでより詳細な原子核密度分布を求める手法の開発に成功した。従来、中性子線回折データから核密度分布を解析するためには最大エントロピー法(MEM)と呼ばれる手法が用いられてきた。しかし、SMによる解析法を新たに開発し、これを典型的な強誘電体の1つであるKH2PO4(KDP)に適用したところ、MEMでは不鮮明だった水素原子の核密度分布を詳細に可視化することができた。

詳しい説明はこちらから
原論文は以下からご覧いただけます。
A Method Evaluating Nuclear Density from Neutron Diffraction Data by Using Sparse Modeling
Hiroshi Tanaka, Michihiro Oie, and Kazuki Oko, J. Phys. Soc. Jpn. 88, 053501 (2019).