JPSJ 2020年7月号の注目論文: 大規模超伝導シミュレーションのための超高速新手法
超伝導体の接合や磁束での準粒子励起の研究は、マヨラナ準粒子励起を用いたトポロジカル量子コンピューティングの提案等もあり重要度を増してきている。しかしながら、空間的に非一様な超伝導体のシミュレーションは計算量の問題で困難があった。本研究で提案されたLocalized Krylov Bogoliubov-de Gennes method(LK-BdG)では、超伝導体の一粒子グリーン関数の実空間局在性の利用により計算量が劇的に削減され、ボゴリューボフ-ドジャン(BdG)方程式の超高速シミュレーションが可能となった。これにより、ハミルトニアン行列の次元が数十万-数千万となる巨大な系の計算が現実的な時間で実行可能となった。
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原論文は以下からご覧いただけます。
N-independent Localized Krylov-Bogoliubov-de Gennes Method: Ultra-fast Numerical Approach to Large-scale Inhomogeneous Superconductors
Yuki Nagai, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 074703 (2020).
JPSJ 2020年7月号の注目論文: 揺らぐ曲面上のBrown運動
2成分液体の相分離界面や脂質分子流動膜を想定し、曲面上にある粒子の拡散の理論的考察を行っている。Brown粒子が時間変化する曲面上に常に存在することを拘束条件として、平面上に射影した拡散係数を計算した。結果は二つの効果で表現できる。一つは従来から知られている幾何学的効果であり、平面上の拡散に比べて拡散係数が減少する。もう一つは新しい効果であり、この効果によって揺らぐ曲面によって拡散係数が増大することが示された。ただし、二つの効果の和は平面上の拡散係数より大きくなることはない。
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原論文は以下からご覧いただけます。
Brownian Motion on a Fluctuating Random Geometry
Takao Ohta, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 074001 (2020).