JPSJ 2020年9月号の注目論文: 四方逆プリズム型8配位遷移金属錯体の光誘起磁気相転移 ―非回帰電子遍歴に基づく可逆磁化スイッチング―
四方逆プリズムMo錯体を構築素子とする8配位シアノ架橋錯化合物Cu2[Mo(CN)8]は,可視光誘起の多段磁気相転移で知られている.照射光波長による定量磁化制御,発現磁化の長寿命と温度耐性,機能性光学磁性材料の期待は高いが,物理機構の詳細は未解明であった.本研究は,有効軌道を抽出して遍歴電子模型を設定し,群論を用いた解析により可能な磁性・非磁性状態を同定し,これらの間に起こり得る光誘起相転移を時間依存Schrödinger方程式を解いて視覚化している.その結論は,"異なる波長の光照射による磁化増減往復過程での電子の移動は2つの状態の間の往復である"との先入観に反し,"光照射前後では磁化は同じでも電子の状態は変化している"ことを明らかにしている.
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原論文は以下からご覧いただけます。
Photoinduced Bidirectional Magnetism against Monodirectional Electronics in Square-Antiprismatic Octacyanometalates
Jun Ohara and Shoji Yamamoto, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 093706 (2020).