JPSJ注目論文

JPSJ 2021年1月号の注目論文: 量子臨界点近傍における中性子散乱強度の総和則

中性子散乱は磁性体の研究に重要な実験手段である。この中性子散乱の散乱強度は、エネルギーと運動量で積分すると一定値となり、総和則が成り立つ。磁性体の励起状態には、磁気モーメントの方向と大きさの揺らぎに由来する横モードと縦モードがあり、量子臨界点近傍では後者の揺らぎは無視できない。この縦モードを取り込んだ総和則が導出され、量子臨界点近傍における磁性体の励起構造の解明に、重要な役割を果たすことが期待される。


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Total Moment Sum Rule for Magnets in the Vicinity of Quantum Critical Point
Masashige Matsumoto
J. Phys. Soc. Jpn. 90, 014701 (2021)

JPSJ 2021年1月号の注目論文: 複数の秩序が生むドメイン壁の不安定性

本論文はマルチフェロイクス系の複合ドメイン壁を磁場で駆動した際のダイナミクスを理論的に研究し、複数の秩序間の相関がダイナミクスに与える影響を明らかにした。特に、駆動された複合ドメイン壁の内部構造に動的な不安定性が現れ、複合ドメイン壁の自発的分裂という新たな現象が起きることを発見した。秩序が3種類以上存在することで複数種類の複合ドメイン壁を持つことがこの現象の本質である。


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Dynamics of Composite Domain Walls in Multiferroics in Magnetic Field and Their Instability
Koji Kawahara and Hirokazu Tsunetsugu
J. Phys. Soc. Jpn. 90, 014703 (2021).


JPSJ 2021年1月号の注目論文: 「消えては結ぶ磁気の渦」:擬2次元磁性体における渦と反渦の観察

2次元性の強い磁性結晶において渦と反渦の磁気模様が対を成して現れる様子が世界で初めて観察された。あたかも"消えては結ぶ磁気の渦"として、結晶が磁性を示すようになる温度をまたいで渦と反渦の対構造が現れる。"磁性体における2次元系特有の相転移現象(ベレジンスキー・コステリッツ・サウレス転移)"は半世紀前に理論予言され、今や統計力学の基本概念の一つとして確立されている。2016年にはノーベル物理学賞が授けられた。にもかかわらず、これまで磁性体において実際の実験で観察されていない。本研究は半世紀以上にわたって停滞していた難題に突破口を与えるべく実施されたものであり、最終的な実証に向けての重要な一歩となる。


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Formations of Narrow Stripes and Vortex-Antivortex Pairs in a Quasi-Two-Dimensional Ferromagnet K2CuF4
Yoshihiko Togawa, Tetsuya Akashi, Hiroto Kasai, Gary W. Paterson, Stephen McVitie, Yusuke Kousaka, Hiroyuki Shinada, Jun-ichiro Kishine, and Jun Akimitsu
J. Phys. Soc. Jpn. 90, 014702 (2021)