JPSJ 2021年3月号の注目論文: トポロジカルノーダルライン半金属NaAlSiの奇妙な電子状態と超伝導性
7 Kの転移温度を示す超伝導体である金属間化合物NaAlSiは、最近の電子状態計算より、クリーンなトポロジカルノーダルライン半金属であることが指摘され、超伝導との関連が注目されている。今回、NaAlSiの単結晶がフラックス法により作製され、それらを用いた物性評価が行われた。その結果、NaAlSiにはsp電子系にも関わらず伝導電子に強い電子相関が働いていることや、異方的な超伝導ギャップが存在することが示された。これらのことから、NaAlSiの超伝導は単純なフォノンでなく、その特殊な電子構造に由来すると考えられる。
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Superconductivity in the Topological Nodal-line Semimetal NaAlSi
Takahiro Yamada, Daigorou Hirai, Hisanori Yamane, and Zenji Hiroi
J. Phys. Soc. Jpn. 90, 034710 (2021).
JPSJ 2021年3月号の注目論文: 電気化学ゼーベック係数αと粘性係数ηとの不思議な相関
エネルギーハーベスト技術の一つとして、電気化学ゼーベック効果を用いた熱電変換セルがよく知られている。電気化学ゼーベック係数α=(dV/dT: V は溶質の酸化還元電位、T は温度)は、熱電変換セルの性能を支配する重要なパラメターの一つである。この研究では、最も単純な酸化還元対(Fe2+/Fe3+)を16種対の有機溶媒に溶解し、そのαを決定した。αは有機溶媒に強く依存して、0.14mV/K(グリセリン)から3.60mV/K(アセトン)まで広く分布した。さらに、αと有機溶媒の粘性係数ηとの間における経験則(α∝η-0.4)を発見した。
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Scaling Relation between Electrochemical Seebeck Coefficient for Fe2+/Fe3+ in Organic Solvent and Its Viscosity
Dai Inoue, Hideharu Niwa, Hiroaki Nitani, and Yutaka Moritomo
J. Phys. Soc. Jpn. 90, 033602 (2021).
JPSJ 2021年3月号の注目論文: 4次元相転移は実在する - ナノ多孔体中超流動ヘリウムの量子臨界性 -
ナノ多孔体中に閉じ込めた液体ヘリウムの超流動特性を実験的に調べ、超流動転移温度での臨界現象が4次元XY型の普遍性クラスに属することを明らかにした。これは4次元の相転移が現実の物質で現れたユニークな例であり、ナノ細孔に閉じ込められたヘリウムの強い量子臨界性を反映している。4次元臨界現象は量子相転移における次元性の変化で説明できるため、本研究の成果は相転移の基本的理解と新しい相転移現象の発見解明に貢献すると期待される。
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Evidence for 4D XY Quantum Criticality in 4He Confined in Nanoporous Media at Finite Temperatures
Tomoyuki Tani, Yusuke Nago, Satoshi Murakawa, and Keiya Shirahama
J. Phys. Soc. Jpn. 90, 033601 (2021).
JPSJ 2021年3月号の注目論文: 短距離相互作用スピングラス模型における基底状態の一意性について
短距離相互作用がランダムに定まっているスピングラス模型の代表的な模型としてEdwards-Anderson 模型がよく知られている.相互作用が連続なランダム変数ならば,Edwards-Anderson模型の基底状態は自明な縮退を除き一意的に定まることが示された.
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Uniqueness of Ground State in the Edwards-Anderson Spin Glass Model
Chigak Itoi, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 033002 (2021).