JPSJ注目論文

JPSJ 2021年5月号の注目論文: 有機ディラック電子系における電流誘起トポロジカル熱電効果

本論文は、空間反転対称性のない結晶がゼロ磁場で示す新しい電流誘起熱電効果「非線形異常Ettingshausen効果」を提案するもので、有機導体α-(BEDT-TTF)2I3の弱い電荷秩序状態の2次元Dirac電子系を例にとって議論している。非線形異常Ettingshausen効果は、電流を伴う非平衡分布に誘起されたBerry曲率効果で、電場の垂直方向に電場の自乗に比例した熱流を生成する。そのため電場反転に対し熱流が向きを変えない整流特性(非相反性)をもつ。これはα-(BEDT-TTF)2I3で最近観測された非線形異常Hall効果に対応する熱電効果であり、両効果は関連して現れることが期待される。


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原論文は以下からご覧いただけます。
Possible Nonlinear Anomalous Thermoelectric Effect in Organic Massive Dirac Fermion System
Toshihito Osada and Andhika Kiswandhi
J. Phys. Soc. Jpn. 90, 053704 (2021)