JPSJ注目論文

JPSJ 2021年6月号の注目論文: そっくりな元素からなる物質に現れた超伝導と奇妙な絶縁体状態

金属元素であるニオブ(Nb)とタンタル(Ta)はよく似た性質をもつ元素であり、ニオブを含む物質とタンタルを含む物質は同様の性質を示すことが多い。しかし、これらをパラジウム(Pd)とテルル(Te)と組み合わせた物質Nb2Pd3Te5とTa2Pd3Te5は、同じ原子配列をもつにもかかわらず、全く異なる性質を示す。ニオブを含むNb2Pd3Te5は超伝導体であるが、Ta2Pd3Te5は変わった絶縁体的な振る舞いを示し、他の元素を置換することで初めて超伝導を示すことが見出された。この発見は励起子絶縁体という奇妙な絶縁体状態の性質の解明に繋がる。

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原論文は以下からご覧いただけます。
Superconductivity in Nb2Pd3Te5 and Chemically-Doped Ta2Pd3Te5
Naoya Higashihara, Yoshihiko Okamoto, Yuma Yoshikawa, Youichi Yamakawa, Hiroshi Takatsu, Hiroshi Kageyama, and Koshi Takenaka, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 063705 (2021).

JPSJ 2021年6月号の注目論文: イリジウム酸化物Ca5Ir3O12における"隠れた秩序"の謎解きの始まり

5d遷移金属イリジウム酸化物Ca5Ir3O12の105K相転移の秩序変数は長らく未解明であったが,最近の非弾性X線散乱実験を通じて超格子反射が発見された。観測された超格子反射の特徴的な散乱ベクトル依存性は秩序変数が点群31mの既約表現A2の場合にのみ説明される。理論的考察から105 Kでの相転移の秩序変数は電気トロイダル多極子であることが示された。

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原論文は以下からご覧いただけます。
First Observation of Superlattice Reflections in the Hidden Order at 105 K of Spin-Orbit Coupled Iridium Oxide Ca5Ir3O12
Hiroki Hanate, Takumi Hasegawa, Satoru Hayami, Satoshi Tsutsui, Shoya Kawano, and Kazuyuki Matsuhira, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 063702 (2021).