JPSJ 2021年7月号の注目論文: 精密高圧磁化測定技術により量子磁性相探索をスピードアップ
SQUID磁気計とそれに挿入する高圧セルを利用する高圧磁化測定は、興味深い磁性相を物質スクリーニングするための迅速・簡便な手段である。ただし、その適用例は磁化測定の精度の問題からこれまでは比較的大きい磁化率を示す物質に限られてきた。今回、磁化測定の精度を向上させるための高圧セル装置の改良と磁化抽出手法の開発が行われ、さらにそれらを用いた磁化測定がなされた。開発された手法では圧力6.3万気圧以下での量子スピン物質の常磁性磁化率測定に足る精度が得られており、このような超高圧下における殆ど全ての磁性相の評価に適用可能であることを示している。
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Design of Opposed-Anvil-Type High-Pressure Cell for Precision Magnetometry and Its Application to Quantum Magnetism
Naoka Hiraoka, Kelton Whiteaker, Marian Blankenhorn, Yoshiyuki Hayashi, Ryosuke Oka, Hidenori Takagi, and Kentaro Kitagawa, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 074001 (2021).
JPSJ 2021年7月号の注目論文: "電子-正孔対"と"電子-電子対"の凝縮状態を高圧力で制御
近年、電子と正孔の束縛状態である励起子が凝縮状態となった励起子絶縁体の研究が活発に行われている。その有力な候補物質であるTa2NiSe5に対して、高圧力を精密に制御した環境下での物性測定が行われた。その結果、半導体-半金属転移に伴って励起子相が不安定化し、電子格子相互作用が主要となる混成ギャップが生じること、さらにそのギャップが消失した高圧域において超伝導が出現することが見出された。
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Hybridization-gap Formation and Superconductivity in the Pressure-induced Semimetallic Phase of the Excitonic Insulator Ta2NiSe5
Kazuyuki Matsubayashi, Hidekazu Okamura, Takashi Mizokawa, Naoyuki Katayama, Akitoshi Nakano, Hiroshi Sawa, Tatsuya Kaneko, Tatsuya Toriyama, Takehisa Konishi, Yukinori Ohta, Hiroto Arima, Rina Yamanaka, Akihiko Hisada, Taku Okada, Yuka Ikemoto, Taro Moriwaki, Koji Munakata, Akiko Nakao, Minoru Nohara, Yangfan Lu, Hidenori Takagi, and Yoshiya Uwatoko, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 074706 (2021)
JPSJ 2021年7月号の注目論文: 磁場方向に敏感なナノスケール磁気スキルミオン結晶の機構解明
近年,磁性とトポロジーが有機的に絡み合うことによって生まれる特異なトポロジカル磁性相に関する研究が活発に行われている.その中でも本論文は,電子がもつ多様な内部自由度間の相関とトポロジーの協奏効果のもとで現れる磁気スキルミオン結晶の発現機構を報告している.理論模型の構築・解析により得られた磁気スキルミオン結晶相は,ナノスケールの周期構造や磁場方向に敏感な性質を示しており,f 電子系で初めてとなる磁気スキルミオン物質EuPtSiの特徴を捉えたものになっている.本成果をもとにして,さらなる新奇なトポロジカル磁性相の物質探索が期待される.
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Field-Direction Sensitive Skyrmion Crystals in Cubic Chiral Systems: Implication to 4f-Electron Compound EuPtSi
Satoru Hayami and Ryota Yambe, J. Phys. Soc. Jpn. 90, 073705 (2021).