JPSJ注目論文

JPSJ 2021年9月号の注目論文: 単純な酸化物ReO2で見つかったディラック電子の鎖

近年、固体のバンド構造中に現れる相対論的粒子であるディラック電子が注目され、ディラック電子に由来した超高易動度や巨大磁気抵抗を示す物質が盛んに研究されている。特に、ノンシンモルフィックな結晶の対称性によって保護された「砂時計型」のバンド構造に由来するディラック電子は、スピン軌道相互作用が働いてもその性質が失われないことから重い元素を含む化合物において注目されている。今回、レニウムの単純な酸化物の一つであるReO2の単結晶が作製され、22000%に達する巨大な磁気抵抗と量子振動測定によるフェルミ面の観測が報告された。電子状態計算との比較から、ReO2はフェルミ準位近傍に砂時計型のバンドを持ち、砂時計の交点が2種類のループを形成して連なった「ディラックループ鎖」という特殊な電子構造を持つことが明らかになった。


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原論文は以下からご覧いただけます。
Extremely Large Magnetoresistance in the Hourglass Dirac Loop Chain Metal β-ReO2
Daigorou Hirai, Takahito Anbai, Shinya Uji, Tamio Oguchi, and Zenji Hiroi1 , J. Phys. Soc. Jpn. 90, 094708.