JPSJ注目論文

JPSJ 2022年4月号の注目論文:ペプチド受容体放射性核種療法を拓く放射性医薬品用177Luの加速器製造

ホルモン・ペプチドを分泌する細胞にできる神経内分泌腫瘍(NEN)の治療用に、最近放射性同位体(RI)のルテチウム-177(177Lu)で標識された放射性医薬品「ルタテラ」が承認された。「ルタテラ」は腫瘍部細胞に発現する物質に取込まれるため177Luから放出される放射線は腫瘍内部から局所的に照射される。この原理に基づく療法はぺプチド受容体放射性核種療法と称され、177Lu等を用いた関連研究・治験試験が急増している。177Luは、現在原子炉(海外)のみで製造されている。加速器でも製造できるが、177Luの品質(核種純度)が未知のため未使用である。本研究では、高品質177Luの製造に不可欠な176Yb試料の濃縮度を決定する方法を初めて明らかにし、医療用177Luの加速器製造に見通しを得た。この成果は、国内外の177Luを用いた創薬・治験試験研究の展開に大きく資すると期待される。


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原論文は以下からご覧いただけます。
Estimated Isotopic Compositions of Yb in Enriched 176Yb for Producing 177Lu with High Radionuclide Purity by 176Yb(d,x)177Lu
Yasuki Nagai, Masako Kawabata, Shintaro Hashimoto, Kazuaki Tsukada, Kazuyuki Hashimoto, Shoji Motoishi, Hideya Saeki, Arata Motomura, Futoshi Minato, and Masatoshi Itoh
J. Phys. Soc. Jpn. 91, 044201 (2022)