JPSJ 2022年10月号の注目論文：隠れた電子ネマティック秩序がもたらす異常金属状態

強相関電子系において、しばしば電気抵抗率が低温領域で温度に比例して変化する振る舞いが観測される。これは金属中の電子状態を取り扱う標準理論では完全には説明できず、異常金属と呼ばれその機構は謎に包まれている。これまで、この異常金属状態は反強磁性状態が現れる近傍でみられることがほとんどだったのに対し、本研究は、鉄系超伝導体Ba_1-xRb_xFe₂As₂において反強磁性相から十分離れた領域で異常金属的振る舞いが現れることを明らかにした。そこでは、電子系が回転対称性を破ろうとする揺らぎが臨界的に発達していると考えられ、それと観測された異常金属との関係が示唆された。

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原論文は以下からご覧いただけます。
Charge Transport in Ba_1−xRb_xFe₂As₂ Single Crystals
Masaya Tsujii, Kousuke Ishida, Shigeyuki Ishida, Yuta Mizukami, Akira Iyo, Hiroshi Eisaki, and Takasada Shibauchi, J. Phys. Soc. Jpn. 91, 104706 (2022).