JPSJ注目論文

JPSJ 2023年11月号の注目論文:カイラル電荷 -URu2Si2における隠れた秩序の候補-

物質科学の魅力の一つに多彩な秩序相の存在がある。磁性体や誘電体といった相は代表例であり、その微視的な起源が磁気双極子や電気双極子の整列である事はよく知られている。一方、1985年にURu2Si2で発見された明確な比熱異常を伴う秩序相は、長年の膨大な研究にも関わらず、その微視的な起源や秩序変数が未だ不明であり、隠れた秩序と呼ばれている。本論文は、URu2Si2の隠れた秩序が結晶中の電子運動に付随する「カイラル電荷」の交替的整列であることを指摘したものであり、その存在を検証するための新しい実験手法も提案されている。本成果により、長年の謎である隠れた秩序状態の解明に向けた新たな展開が期待される。

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原論文は以下からご覧いただけます。
Chiral Charge as Hidden Order Parameter in URu2Si2
Satoru Hayami and Hiroaki Kusunose
J. Phys. Soc. Jpn. 92, 113704 (2023)


JPSJ 2023年11月号の注目論文:一方通行の光回路をナノ加工したシリコンで実現

光波のトポロジカルな性質を研究する分野はトポロジカルフォトニクスと呼ばれ、近年、世界規模で研究が急進展中である。本研究では、有限要素法による試料設計に基づいて、汎用性の高いシリコン系素材をナノ加工してトポロジカルフォトニック結晶を作製した。トポロジカルな性質の異なる2種類のフォトニック結晶の境界上で一方通行の光回路の実現し、高分解能赤外反射測定で実証された。

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原論文は以下からご覧いただけます。
Design and Observation of Topological Band Gaps and Edge Modes of SOI Photonic Crystal Slabs in the Mid-Infrared Range
Afshan Begum, Yuanzhao Yao, Takashi Kuroda, Yoshihiko Takeda, Naoki Ikeda, Yoshimasa Sugimoto, Takaaki Mano, and Kazuaki Sakoda.
J. Phys. Soc. Jpn. 92, 114402 (2023)