JPSJ 2023年12月号の注目論文:量子異常を伴う有機ディラック半金属
量子異常の物理および関連する現象は、素粒子・宇宙物理学分野での研究対象とされてきたが、近年トポロジカル物質においても見出され、物質系にも存在する普遍的な現象であることが明らかになってきた。量子異常はカイラル対称性が破れた3次元系に存在する。ところが最近、擬2次元有機ディラック半金属α-(BEDT-TTF)2I3の低温領域で量子異常に関する電磁輸送現象が発見され注目を集めている。これまでのトポロジカル物質とは異なり、この系のスピン軌道相互作用は無視でき、強い電子相関効果によりカイラル対称性が破れていることも特徴であり、量子異常の物理の新たな展開が期待されている。
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原論文は以下からご覧いただけます。
Evidence for Three-Dimensional Dirac Semimetal State in Strongly Correlated Organic Quasi-Two-Dimensional Material
Naoya Tajima, Yoshitaka Kawasugi, Takao Morinari, Ryuhei Oka, Toshio Naito, and Reizo Kato
J. Phys. Soc. Jpn. 92, 123702 (2023).
JPSJ 2023年12月号の注目論文:CMOS NAND ゲートにみる計算過程と熱力学的性質の関連性
コンピュータによる計算の実行に伴うエネルギーコストの理解は物理的に興味深い問題であるだけでなく、実用上重要でもある。本論文では、トランジスタのサブスレッショルド領域で動作する CMOS NAND ゲートに焦点を当て、計算の過程とそれに伴う散逸熱を解析した。計算の熱力学的性質が、ゲートへの入力電圧の違いや出力電圧のダイナミクスとどのように関連するかが明らかになった。コンピュータのエネルギー消費についての深い理解につながると期待される。
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Thermodynamics of Computation for CMOS NAND Gate
Daigo Yoshino and Yasuhiro Tokura
J. Phys. Soc. Jpn. 92, 124004 (2023)