JPSJ注目論文

JPSJ 2024年5月号の注目論文:渦糸液体の凍結による超伝導

不純物や不均一性を全く有さない超伝導体が磁場下に置かれたときの低温相である渦糸固体相では、電流に伴う渦糸の散逸運動により電気抵抗は有限であるというのが通常の理解であった。しかし実際の十分良質な単結晶の電気抵抗データは、渦糸液体から固体相への凍結が「超伝導」転移、つまり電気抵抗消失の原因であることを示している。銅酸化物超伝導体などで以前から見られていたこの一見奇妙な現象が今回、繰り込まれた超伝導揺らぎの理論の拡張による詳細な計算により理解できるようになった。

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原論文は以下からご覧いただけます
Vanishing of Resistivity upon Freezing of Vortex Liquid in Clean Superconductors
Naratip Nunchot and Ryusuke Ikeda, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 054712 (2024).

JPSJ 2024年5月号の注目論文:金属磁性体の有限温度磁気特性の定量評価を目指して ―交換スティッフネス定数の定量評価の試み

磁性材料の巨視的特性の評価を行うために、ランダウ・リフシッツ・ギルバート(LLG)方程式で用いる交換スティッフネス定数A(T)を第一原理計算で求めた。本研究では、実用材として代表的なFe20Ni80(パーマロイ)とFePtを取り上げたが、両系ともに室温におけるA(T)の計算結果は測定値をよく再現しており、FePtについてはA(T)に大きな方位依存性が存在することなど興味深い結果を示している。

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Evaluation of the Exchange Stiffness Constants of Itinerant Magnets at Finite Temperatures from the First-Principles Calculations
Akimasa Sakuma, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 054705 (2024).

JPSJ 2024年5月号の注目論文:圧力下高温超伝導体層状ニッケル酸化物の常圧における電子密度波状態をミクロに観測

転移温度約80 Kの圧力下高温超伝導が二層型ペロブスカイト構造のニッケル酸化物La3Ni2O7において発見されたことにより、遷移金属酸化物における高温超伝導探索の歴史は新たな転換点を迎えた。本研究では、核磁気共鳴(NMR)法を用いてLa3Ni2O7および類似の三層型La4Ni3O10の常圧における電荷やスピンの自由度が絡むミクロ電子状態を調べた。その結果、これらの物質は共通して電荷が空間分布した密度波転移を伴う金属的な電子状態を有していることを見出した。今後の圧力下高温超伝導現象との関係の解明へ向けた一歩となる成果である。

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原論文は以下からご覧いただけます
Multiband Metallic Ground State in Multilayered Nickelates La3Ni2O7 and La4Ni3O10 Probed by 139La-NMR at Ambient Pressure
Masataka Kakoi, Takashi Oi, Yujiro Ohshita, Mitsuharu Yashima, Kazuhiko Kuroki, Takeru Kato, Hidefumi Takahashi, Shintaro Ishiwata, Yoshinobu Adachi, Naoyuki Hatada, Tetsuya Uda, and Hidekazu Mukuda, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 053702 (2024).