JPSJ注目論文

JPSJ 2024年7月号の注目論文:パイロクロアネットワークの d2 三量体とd3 四量体

スピネル型の結晶構造を持つAlV2O4では、平均価数+2.5 の V が三量体と四量体を形成する特異な格子変形が報告されて注目を集めてきたが、その起源は未解明であった。本研究において、AlV2O4の電子状態を硬X線光電子分光で調べたところ、V が+2 価と+3 価に価数分離していることが判明した。三量体および四量体の V-V 結合を形成する V の 3d 軌道を解析することによって、d2 電子配置となる+3 価の V が三量体を形成し、d3 電子配置の+2 価の V が四量体を形成することでAlV2O4の格子変形が説明できることがわかった。


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Charge Disproportionation for Trimerization and Tetramerization in Spinel-Type AlV2O4
Mario Okawa, Ryota Shimoyama, Ryohei Takayanagi, Akira Yasui, Eiji Ikenaga, Takuro Katsufuji, Tomohiko Saitoh, and Takashi Mizokawa, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 074709 (2024)

JPSJ 2024年7月号の注目論文:磁気スキルミオン格子形成におけるらせん磁気ヘリシティの統合

磁性原子のスピンが渦巻き状に配列して磁気スキルミオン格子と呼ばれる特異な磁気構造を作ることがある。ここで重要な働きを担うと考えられてきたのが、結晶が反転対称性を持たないときに生じるスピン間の反対称交換相互作用である。ところが、今回発見されたEuNiGe3の磁気スキルミオン格子では、反対称交換相互作用がもたらす本来のらせんヘリシティ(巻き方)を逆転させて、ヘリシティを一つに統合させていることがわかった。反対称交換相互作用を凌駕する安定機構が存在することを示すものであり、従来の考え方に変革を迫る重要な結果であるといえる。

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Helicity Unification by Triangular Skyrmion Lattice Formation in the Noncentrosymmetric Tetragonal Magnet EuNiGe3
Takeshi Matsumura, Kenshin Kurauchi, Mitsuru Tsukagoshi, Nonoka Higa, Hironori Nakao, Masashi Kakihana, Masato Hedo, Takao Nakama, and Yoshichika Ōnuki, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 074705 (2024)