JPSJ注目論文

JPSJ 2024年10月号の注目論文:レーザー励起光電子顕微鏡で見る量子液晶の剛性

電子状態が液晶のように方向性を持つ量子液晶の1つである鉄系超伝導体の電子ネマティック相では、方向性の強度が実空間で波状になる新奇なドメイン構造が報告された。これは、量子液晶の剛性が高いためにドメイン壁が異常に厚くなるためと考えられている。レーザー励起光電子顕微鏡を用いた電子ネマティック相の観察を複数の物質で行い、それらを比較することから系が通常金属から逸脱する度合いとドメイン壁の厚みがよく対応していることが見出された。これにより、量子液晶の剛性には、異常金属をもたらすスピンや軌道のゆらぎが大きくかかわっていることが示唆される。

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Coherence Length of Electronic Nematicity in Iron-Based Superconductors
Yoichi Kageyama, Asato Onishi, Cédric Bareille, Kousuke Ishida, Yuta Mizukami, Shigeyuki Ishida, Hiroshi Eisaki, Kenichiro Hashimoto, Toshiyuki Taniuchi, Shik Shin, Hiroshi Kontani, Takasada Shibauchi
J. Phys. Soc. Jpn. 93, 103702 (2024)

JPSJ 2024年10月号の注目論文:中性子ホログラフィーで強誘電体の酸素原子を観る ―自発分極のさらなる理解に向けて―

代表的な強誘電体であるBaTiO3に、近年開発された多波長中性子ホログラフィーを適用し、蛍光X線ホログラフィーでは観測が困難だった酸素原子の可視化に成功した。これより、強誘電性の起源である酸素原子の変位の大きさについても評価可能になり、自発分極を原子スケールから理解する上で強力な解析手法になることを示した。

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原論文は以下からご覧いただけます
Atomic Imaging of BaTiO3 by Multiple-Wavelength Neutron Holography
Kota Yamakawa, Hajime Nakada, Koji Kimura, Kenichi Oikawa, Masahide Harada, Yasuhiro Inamura, Kenji Ohoyama, and Koichi Hayashi, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 104601 (2024).