楽しい物理実験室(物理教育委員会)

2023年度 自然の不思議―物理教室

2023年度物理教室
開催案内はこちら

(各講座の概要や、
お申込方法を掲載しております)

「自然の不思議-物理教室」は、様々な実験を通して楽しみながら物理現象を学ぶことができる、小学生高学年・中学生向けの体験型実験教室です。
毎回、専門の講師を招き、物理現象や実験を丁寧に解説いただきます。
国立科学博物館(東京・上野)の実験室にて、年に複数回開催しています。








2023年度の開催日程・講座名は次のとおりです。

第1回 7月9日(日) 「ガリレオが見つけた物理の法則」
第2回 7月16日(日) 「スパゲッティの折れ方を探究してみよう」
第3回 7月29日(土) 「浮力と圧力を体験しよう!」
第4回 8月6日(日) 「星座の模型を作ってみよう」
第5回 8月26日(土) 「お菓子の箱で分光器を作ってみよう」

ご参加ご希望の方は、国立科学博物館のWEBページ内イベントカレンダーをご覧ください。
※イベントカレンダー上で、物理教室が開催される日程をクリックされますと、物理教室の詳細情報・お申込方法がご覧いただけます。
お問合せ先:国立科学博物館 学習企画・調整課 TEL:03-5814-9888


教室の様子


第1回 7月9日(日)「ガリレオが見つけた物理の法則」

阿部 敬 先生(千葉県立千葉高等学校)

 昨年度は参加人数および実施時間を縮小して開催しましたが、今年度からコロナ禍前の体制(定員20名、実施時間90分間)で再開しました。
第1回は、阿部先生による教室で、ガリレオが発見した「振り子の等時性」の紹介を中心に、前半は様々の演示実験が行われました。千葉県立千葉高校の高校生3名もサポーターとして参加協力してくれました。演示実験の一例を紹介すると、滴定用ビュレットに牛乳を入れ、そこから"ほぼ"等時間間隔で落下する液滴(牛乳滴?)を観察します。部屋を真っ暗にし、簡易暗幕の前でストロボ投影して観察すると、白い液滴が自由落下する様子をストロボ撮影したような像を観察できます。阿部先生がビュレットからの落下間隔を調整し、ストロボの周波数をサポーターの高校生が微調整しました。液滴が静止したように見せるには周波数の調整がなかなか難しかったのですが、参加した小中学生からの声援を受け、きちんと静止した時には拍手が起こりました。
 振り子の等時性の説明に関連して、振り子時計に話を移し、後半は振り子時計の工作を行いました。振り子時計の要となる脱進機は、予め木工ボードをレーザー加工して作成された十字状の歯車と爪の付いた振り子が用意されていました。参加生徒は接着剤で部品を組み立てるだけで振り子時計を作成することが出来るキットでした。歯車の回転は、共通の回転軸の糸巻き(これも作成)に糸を巻き付け、他端に錘を接続してその落下によって駆動させています。歯車と爪のかみ合わせの調整が少しコツが必要で、阿部先生、サポーターの高校生、科博スタッフが総動員して参加生徒の手伝いをしました。
 終了時にはガリレオの業績の一つである望遠鏡の紹介をし、ガリレオ式望遠鏡のキットがお土産に配られました。振り子時計も望遠鏡も、その原理は小学生には少し難しいと思いますが、実際に動くものを自分で工作したことで、少し理解が深まったのではないかと感じました。

2023-shokai1-1.jpg 2023-shokai1-2.jpg

2023-shokai1-3.jpg 2023-shokai1-4.jpg

2023-shokai1-5.jpg


第2回 7月16日(日)「スパゲッティの折れ方を探究してみよう」

大山光晴 先生(秀明大学)

 第2回は、スパゲッティの乾麺(以下、麺)の折れ方を観察する教室でした。御存知の方も多いかと思いますが、"1本のスパゲッティの乾麺を折るとき、必ずと言ってよいほど3個以上に分かれるのはなぜか"という問いに関して研究した論文が20年近く前に米国物理学会の雑誌に掲載されています。今回は当然ですが、そのような難しい話は抜きに、太さの異なるスパゲッティの乾麺、そばやうどん、そうめんの乾麺を用意し、折りまくりました。
 最初は単に面白がっていた生徒も、途中から、どういうときにどういうふうに折れるのか、を"後で他の人に説明できるように実験して整理してみましょう"とワークシートに記入させる形で誘導すると、
・机にスパゲッティの一端を固定して、他端を持ち上げて折れる瞬間の角度を測ろうとする生徒
・両手ではなく片手で端をもって振り子のように振って折る生徒
・片持ち梁に荷重をかけるような設定で実験をする生徒
・折れるときの荷重と乾麺の太さ(本数)の関係を探ろうとする生徒
・1本の乾麺が何個のピースに分かれるか、もつ位置をいろいろと変えて実験する生徒
・3つのピースに分かれる条件を出したうえで、その長さの関係を探ろうとする生徒
・はじけ飛んだピースがどれくらい遠くに飛ぶのか計測する生徒
・スマホの動画撮影機能を用いて、割れる瞬間を観察する生徒、等々
と、こちらの想像をはるかに超える様々のアプローチで"探究"していました。
 乾麺を折る、という一見非常に単純にみえる現象の中にも、いろいろな効果が含まれており、またそれらを抽出するためにはどんな工夫が必要なのかという、実験的研究の基本になる考え方を学べたのではないかと思います。さらに今回の実験は、通常の工作と異なり、"上手くいかなかった(失敗した)"ということがありませんでした。どんな結果になっても、その結果について探究することが出来、教室をサポートする側も勉強になった教室でした。

2023-shokai2-1.jpg 2023-shokai2-2.jpg

2023-shokai2-3.jpg 2023-shokai2-4.jpg

2023-shokai2-5.jpg


第3回 7月29日(土)「浮力と圧力を体験しよう!」

飯高匡展 先生(市川学園市川中学・高等学校)

 第3回は、飯高先生による教室で、浮沈子を作りました。この教室では、冒頭でその日のテーマに関する講義(お話し)をしてから工作にとりかかることが多いのですが、今回は開始早々、工作に取り掛かりました。
 まず、お弁当についてくる調味料入れに錘代わりのナットを蓋のように取り付けて、そのまま水の入ったペットボトルに沈めます。普通の浮沈子を動かすように、ペットボトルの外側から押してみますが、ほとんどの生徒が「沈みません」。そこで、少し調味料入れに水を入れてから実験すると、上手く上下するようになりました。ここで上下する浮沈子(調味料入れ)をよく観察させ、浮沈子の中の水の量が変わっていることに気付かせました。ここで浮沈子が上下に動く仕組みについての説明がありました。次に、先生の作成した回転する浮沈子を参考に、自作のプロペラを付けた浮沈子作りが始まりました。プロペラの大きさや形によって回転のしやすさや速度が異なることがわかりました。浮力と圧力だけでなく、慣性モーメントや流体の勉強にもなったかもしれません。
 最後にバケツに張った水の中に手袋をして手を入れて水深と水圧の違いを体験し、さらに、3カ所穴を開けておいたペットボトルに水を入れ、それぞれの穴から出てくる水の勢いが違うことを水圧の違いで説明しました。部屋を暗くしてその穴から流れ出る水にレーザー光を当てると、(ほとんど)全反射して水の軌跡に沿って光が曲がっていく様子を観察できました。
 タイトルの「浮力と圧力」以上に内容の濃い教室でした。浮沈子の浮き沈みはすぐに全員が出来ましたが、回転する浮沈子は、なかなか上手く回転しない生徒もいましたが、最後には全員の浮沈子が回転し、さらに食紅等で色付けしたり、ネイリストがつかう星形のデコレーションホログラムを入れたりして、視覚的にも楽しんでいました。

2023-shokai3-1.jpg 2023-shokai3-2.jpg

2023-shokai3-3.jpg 2023-shokai3-4.jpg

2023-shokai3-5.jpg 2023-shokai3-6.jpg


第4回 8月6日(日)「星座の模型を作ってみよう」

宮川浩平 先生(国立天文台 JASMINEプロジェクト)

 第4回は、宮川先生による教室で、北斗七星の星座模型(立体星図)を作りました。立体星図作りは以前にも開催した内容ですが、担当の先生が変わるとお話しの内容も変わります。今回は惑星(と恒星)のお話を前半にしていただきました。我々の住んでいる地球が惑星なので、とても身近に感じる惑星ですが、太陽系外の惑星が発見されたのは比較的最近で、現在まで約5000もの惑星が確認されていること、それでもまだ宇宙は分からないことだらけであることなどを教わりました。そして星までの距離の測り方の説明の後、立体星図作りにとりかかりました。
 立体星図は、宮川先生の所属先である国立天文台が企画した工作キットを使いました。宮川先生の説明に従って、全員で一つ一つの工程を確認しながら作業を進めました。竹串の先端に少しだけ接着剤を付ける作業や、ニッパーでの切断、発泡スチロールの台に下穴を開けてから竹串を垂直に差し込んで固定する等、多くの参加者には初めて経験することばかりだったようです。「こうやると上手くいくよ」というコツを伝授してもらえて嬉しそうな顔が印象的でした。
 完成した立体星図をのぞき穴から観察してみると、真っ暗の空間の中に蓄光ビーズが光り北斗七星となって現れました。中学生の参加者の中には、作成途中から原理がわかっていた生徒もいましたが、実際に星座が見えたときに一番興奮していたように見えました。
 教室前半のお話しの部分では、惑星の発見の過程で「相互作用」、恒星の説明で「核融合反応」など、参加者にはすこし(かなり)難しい言葉も出てきました。この教室では、少し背伸びをした内容が含まれ「なんだかよくわからないけど凄そうだ」という目や耳からの体験と、手を動かした体験の両方を経験してもらえたと思います。

2023-shokai4-1.jpg 2023-shokai4-2.jpg

2023-shokai4-3.jpg 2023-shokai4-4.jpg

2023-shokai4-5.jpg 2023-shokai4-6.jpg


第5回 8月26日(土)「お菓子の箱で分光器を作ってみよう」

有馬寛人 先生(東京都立大学)

 第5回は、有馬先生によるフィルム回折格子を用いた分光器の作成を行いました。回折格子型の分光器作成は、今回のようなフィルム回折格子を用いたものからDVDを用いたものなど、多くの類似内容の教室や講座、自作のための解説記事などがあります。それだけ光を分けるというのは身近な自然現象であり、興味を惹くものだと思われます。
 前半は光の反射や屈折の説明から始まり、ボーアの原子模型や水素のスペクトル線の話まで紹介されました。小学生には少し難しかったかもしれませんが、「完全には理解できなかったけど難しい話を頑張って(理解しようとして)聞いてきた」という経験は今後の学習に役立つでしょう。この講座では難しそうな講義だけで終わらず、関連した内容の工作を行うことが特徴の一つです。後半はフィルム回折格子とお菓子の箱を用いた分光器作りを行いました。作成した分光器で早速実験室の蛍光灯を観察し、実験室から廊下に出て展示物の照明に使われている特殊な光源を観察したのち、窓越しに自然光を観察して違いを確認しました。

2023-shokai5-1.jpg 2023-shokai5-2.jpg

2023-shokai5-3.jpg 2023-shokai5-6.jpg

2023-shokai5-4.jpg 2023-shokai5-5.jpg