2025年度 自然の不思議―物理教室
「自然の不思議-物理教室」は、様々な実験を通して楽しみながら物理現象を学ぶことができる、小学生高学年・中学生向けの体験型実験教室です。
毎回、専門の講師を招き、物理現象や実験を丁寧に解説いただきます。
国立科学博物館(東京・上野)の実験室にて、年に複数回開催しています。
2025年度の開催日程・講座名は次のとおりです。
| 第1回 6月15日(日) | 「電気回路の工作で楽しもう!」 市川学園市川中学校・高等学校 飯高 匡展 先生 |
|---|---|
| 第2回 6月21日(土) | 「形について考えてみよう」 千葉県立千葉高等学校 阿部 敬 先生 |
| 第3回 7月20日(日) | 「地球外惑星着陸船のモデル機を作ろう」 早稲田高等学院 小川 慎二郎 先生 |
| 第4回 7月26日(土) | 「箱カメラを作ろう!」 筑波大学付属駒場中高 今和泉 卓也 先生 |
| 第5回 8月3日(日) | 「へこんだ紙風船をたたくと膨らむのはなぜ?」 秀明大学 大山 光晴 先生 |
| 第6回 8月30日(土) | 「電気の種類を突き止めよう! & コイル電車を作ろう!」 早稲田中学校・高等学校 今井 章人 先生 |
ご参加ご希望の方は、国立科学博物館のWEBページ内イベントカレンダーをご覧ください。
※イベントカレンダー上で、物理教室が開催される日程をクリックされますと、物理教室の詳細情報・お申込方法がご覧いただけます。
お問合せ先:国立科学博物館 学習企画・調整課 TEL:03-5814-9888
教室の様子
第1回 6月15日(日) 「電気回路の工作で楽しもう!」
飯高 匡展 先生 (市川学園市川中学校・高等学校)
第1回は磁石やLEDを用いた電気や磁気の工作教室でした。講師の紹介の後、早速工作にとりかかりました。最初は単極モーターを作りました。アルミ箔を帯状に切り出し、プラスチックのカップの外側に貼り付けます。カップの底には銅線と繋がった画鋲を内側に向けて差し込み、アルミ箔の端はカップの内側に折り込みます。乾電池の負極側にフェライト磁石をくっつけ、机上で立てて配置し、それにかぶせるように上記のカップをのせます。乾電池の陽極の上に画鋲の先がのるようにし、且つカップの内側に折り込んだアルミ箔の端が磁石に触れるようにすると、カップがクルクルと回りだします。のせた瞬間にクルクル回りだしたひと、まったく動かないひと、さまざまでしたが、動いたモーターと動かないモーターの違いを観察し、アルミ箔の位置を調整して全員が回る単極モーターの作成に成功しました。磁石の向きを変えた実験を行い、回転の向きが変わることに気づいた参加者もいました。発展テーマとして、電池の向きを変えた実験なども紹介されました。
次に今日のメインの工作であるブレッドボードを用いた3色(フルカラー)LED発光回路の作成に移りました。今回はブレッドボードの規格に合ったスイッチや可変抵抗の他に、抵抗やLEDなど、自分で端子の導線を切ったり曲げたりしなければならないものもあり、難易度の高い工作でした。最初に部品の確認をし、ブレッドボードの説明がありました。3色LEDは、1個のLED素子の中に3色(赤緑青)のLEDがパッケージされており、足が4本(3本の各色アノードと1本の共通カソード)出たものです。それぞれ適当な抵抗を介して赤緑青に点灯し、それらが"混ざった色"が観測されます。今回はこの抵抗を固定抵抗+可変抵抗として、赤緑青の各色の強さを調整することによっていろいろな色を作ってみよう、という内容でした。ブレッドボードに差し込む位置を確認しながら、全員が同じペースで工作を行いました。苦労の甲斐があって、全員が3色の色を確認し、可変抵抗を調整することで調色に挑戦できました。LEDの4本の足をブレッドボードの目的の穴の位置に入るように曲げる加工が大変で、接触不良に起因するトラブルが頻発しましたが、全員根気よくお手本と比較しながら工作を行いました。
単極モーターの実験の最後には、ローレンツ力の解説がありました。参加者には小学生も多く、少し難しいかなと思いましたが、実体験の直後に現象論的な解説を聞くと、非常に素直に受け入れているようでした。重力加速度の存在を知らなくても、物は鉛直下方に落ちることを疑わないことと同じことかもしれません。



第2回 6月21日(土) 「形について考えてみよう」
阿部 敬 先生 (千葉県立千葉高等学校)
第2回はいろいろなものの形について考えてみました。前半は重心について学びました。あらかじめ設計図(切り取り線)が印刷された紙から、トンボ型のヤジロベエを作りました。指の上やスティックのりの上でバランスをとり、重心の位置を感じ取ることができました。次に同じ紙に印刷されたペンスタンドの型を切り取り、鉛筆を挿してバランスをとりました。これはちょっとコツが必要だったようです。なかなかバランスが取れずにいると、阿部先生が「ちょっと貸してごらん」と言って、あっという間にバランスをとってしまったのには、参加者は驚いていました。重心の最後の実験は、工作紙に好きな絵や形を描いて切り取り、その形の重心を求めるものでした。いわゆる吊り下げ法という方法で、任意の2か所に穴をあけ、そこに通したリングから切り取った型と錘のついた糸をぶら下げます。この糸は型紙の重心を通っているので、別の穴で同じ実験を行えば、2つの線の交点が重心に相当します。求めた重心の位置に穴をあけ、ナベネジを通し、反対側をナットで固定してコマにしました。上手く重心が探し出せていればコマがきれいに回ります。コマの大きさによって、回転速度や安定性が変わることに気付きました。
後半は筒状の形を用いて、その長さと、発する音の高さに関係があることを利用して学期作りを行いました。市販のブーブー笛を分解し、ストローと接続します。笛を吹きながらストローを端から切り、少しずつ短くしていくと、短くなるたびに音が高く変化しました。次に、あらかじめ一端を封じた太めのストローを指定の長さに切っていきます。全部で8種類、ドレミファソラシドの1オクターブの8音(ドからドで8本)です。丁寧にカットしたら、拭く方の端(解放している方)を揃えて並べ、テープで固定します。パンパイプやパンフルート、サンポーニャというとイメージしやすいかもしれません。音を出すのに苦労している参加者もいましたが、今日の工作は全て持ち帰ることが出来るので、自宅で時間をかけて練習してもらえればと思います。



第3回 7月20日(日) 「地球外惑星着陸船のモデル機を作ろう」
小川 慎二郎 先生 (早稲田高等学院)
第3回は惑星着陸船のモデル機の製作に挑戦しました。最初は、大気がある火星に着陸するためのパラシュート型着陸船のモデル機の製作です。どのようなパラシュートだと安全に着陸できるのかを知るために、最初に、お弁当のおかずを入れるカップを使った簡単な実験をしました。大きさの違う大小2種類のカップと材質の違う2種類のカップの4種類のカップを使い、どのようなカップがもっともゆっくり落ちるのかを調べる実験です。材質が同じで大きさが違う場合(大小のアルミホイルのカップを使う)、大きさが同じで重さが違う場合(同じ大きさのアルミホイルのカップと紙製のカップを使う)、同じ重さで大きさが違う場合(一方はそのまま、他方はグシャっと丸める)、等々、参加者自身でいろいろな条件を設定して実験し、ゆっくり落ちるためには大きいことと軽いことが大事であることを突き止めました。
次は、参加者自身が発見したこの設計方針にしたがって、紙を使ってパラシュートを製作しました。続いて、ガチャのカプセルを宇宙船に見立て、乗組員(小さな動物のおもちゃ)を乗せたカプセルをパラシュートに繋げます。繋げる部分も紙で作ります。細すぎるとちぎれてしまうし、太すぎると重くなってしまいます。繋げるためのセロハンテープも少ない方がよさそうです。設計方針を念頭に試行錯誤してようやく着陸船の完成です。最後は、的が印刷された用紙を床に置き、着陸実験をしました。ゆっくり落ちるけれど狙った場所に落ちないもの、狙った場所に落ちるけれど中の乗組員がカプセルの外に放り出されてしまうもの、見事無事に着陸に成功するものなど、千差万別、十人十色、さまざまな着陸船の出来上がりです。ここまで、先生やスタッフからはほんのちょっとの助言だけ。参加者の自由な発想で、参加者の数だけの多彩なモデル機ができました。
参加者があまりに工夫を凝らして楽しそうに製作していましたのでだいぶ時間を超過しましたが、次の実験に移ります。次は、大気がない惑星に着陸するためのテンセグリティ型着陸船のモデル機を製作しました。テンセグリティ型着陸船は惑星表面に着陸する際の衝撃を少なくする形になっています。よく跳ねるボールと全然跳ねないボールを実際に落としてみせて、ボールの中がどうなるか考えてもらった後、紙製のストローと輪ゴムを使い、組立図をじっくりと見ながらテンセグリティ着陸船を製作しました。前半と違って、組立図を見ながらの製作は大人でも大変ですが、参加者は楽しそうにワイワイ言いながら途中で放り出すことなく組み立てていました。最後は時間がなくなってしまい、完成しなかった参加者もいましたが、自由に発想する前半と緻密に作業する後半の両方の製作を参加者全員が楽しんだ教室となりました。
最後は先生から「殻付きのマカダミアナッツ」がプレゼントされました。マカダミアナッツは地面に落ちたとき、あまりとびはねない構造になっています。マカダミアナッツの構造は自然の中にある衝撃吸収構造なのです。今日の参加者は、マカダミアナッツを見たときに、今日の教室で学んだことをきっと思い出してくれることでしょう。



第4回 7月26日(土)「箱カメラを作ろう!」
筑波大学付属駒場中高 今和泉 卓也 先生
第4回では箱カメラを作りました。今回は箱から黒画用紙で作成するため、冒頭の座学(お話)の時間はわずかで、早速工作にとりかかりました。あらかじめ用意された牛乳パック大の段ボール箱をガイドにして、その箱の周囲をきれいに囲むように黒画用紙で四角い筒を作成します。筒の一端を1cm程度折り込み、そこにスクリーンとなる薬包紙を貼り付けます。コツの必要な作業ですが、皆さん上手に作っていました。
次に外側の筒を作成します。先ほど作成した筒の上から同様の工程を経てもよいのですが、今回は、内側の筒作成と同じ黒画用紙を使っているので、のりしろ部分の幅を少し短めにしてから残りを4等分して外側の筒を作りました。最後は"現物合わせ"で微調整をしました。外側の筒の一端は黒画用紙で蓋をし、そこに画鋲で小さな穴を開け、内側の筒と組み合わせて最初の工作である「ピンホールカメラ」が完成しました。
このピンホールカメラで、教室の照明を消して白熱球を点灯させ、観察しました。白熱球を2つに増やし、一方の白熱球に赤いフィルムをかぶせたり、左右上下を変えたりして、スクリーン上でどのように観察できるか確認しました。さらにピンホールの大きさを鉛筆を使って少し大きくして、像が明るくなることを確認しました。
光の直進性や、像が左右上下に反転して見えることを確認した後に、最初に開けた穴の周囲にたくさんの穴を開け、穴のサイズも大きくして像を確認しました。予想通り、たくさんの明るい点が見えます。この多数の穴の上(前面)にレンズをセットし、スクリーンの位置を調節するときれいに結像する位置があることを確認しました。この穴を無数に開けたことと同等な、大きな一つの穴にすると、見事に箱カメラで2次元の像を観測することが出来ました。
虫眼鏡の焦点の知識がある生徒が大半だったと思いますが、ピンホールから始め、最後は大きな穴とレンズの組み合わせにして、ただの小さな光の点がきれいな像に変わったときの参加者の喜びようは、光学機器の進化を1時間半の教室で体験させようとした先生の狙いが成功したことを示していたと思います。



第5回 8月3日(日)「へこんだ紙風船をたたくと膨らむのはなぜ?」
秀明大学 大山 光晴 先生



第6回 8月30日(土)「電気の種類を突き止めよう! & コイル電車を作ろう!」
早稲田中学校・高等学校 今井 章人 先生
今年度最後の物理教室は、昨年度第4回の教室を担当した今井先生の電磁気学の教室でした。前半は帯電に関する実験をしました。スコッチテープを適当な長さに切って、実験台(実験机)にきれいに貼り付けます。この時、あとで剥がしやすいように一端を少し折り返しておきます。汗や皮脂がつくと帯電しにくくなるそうで、消毒用アルコール等で手や指先を消毒・乾燥させるとよいようです。アルコールが苦手なひとは、ティッシュやハンカチを使ってテープをきれいに貼り付けました。そのテープを一気に剥がして、机の側面等に、先端だけがくっつくように貼り付けます。凧の足のようにぶら下がった部分に手を近づけると、テープが引き寄せられました。もう一つ、同じように用意したテープを、先にぶら下げたテープに近づけたり、テープを2枚重ねて実験台に貼り、重ねた状態で剥がしてから、2枚を剥がし、それぞれ上側と下側と名前を付けて、上と上、下と下、上と下と組み合わせを変えたときに引き合うのか反発するのかを、予想を立ててから実験で確認してみました。電気量に正と負の二つがあること、三つ目の電気量がもしあったらどうなるべきか、等、考えながら実験結果をまとめ、ワークシートに記入しました。昨年度も登場したフライスティック(静電気発生装置)も用意してありましたが、今回は時間の関係で短時間の体験に終わりました。
後半は銅線で長いコイルを作り、乾電池と磁石を組み合わせた"電車"を走らせました。木の丸棒にきれいに銅線を巻く作業には個性が現れますが、皆さん根気よく丁寧に巻いていました。前半の実験は持ち帰るものはありませんでしたが、自宅で、スコッチテープやセロファンテープなどで実験が可能です。中には帯電しにくいような加工がされているテープもあるとのことで、いろいろ試してみると面白いと解説がありました。後半の工作物は全て持ち帰りで、磁石の向きとコイルの向きをいろいろ変えた実験など、帰宅後に今日の内容を振り返りながら、もう一度実験できる内容でした。




