楽しい物理実験室(物理教育委員会)

2026年度 自然の不思議―物理教室

2024年度物理教室
開催案内はこちら

(各講座の概要や、
お申込方法を掲載しております)

「自然の不思議-物理教室」は、様々な実験を通して楽しみながら物理現象を学ぶことができる、小学生高学年・中学生向けの体験型実験教室です。
毎回、専門の講師を招き、物理現象や実験を丁寧に解説いただきます。
国立科学博物館(東京・上野)の実験室にて、年に複数回開催しています。

2026年度の開催日程・講座名は次のとおりです。

第1回 6月14日(日) 「つくってなっとく!単位のひみつ」
宇都宮大学 共同教育学部 夏目 ゆうの 先生
第2回 6月27日(土) 「光のトリックを設計しよう ― 光を曲げる、色をあやつる ―」
NHK 小幡 哲士 先生
第3回 7月5日(日) 「シャボン膜で探る!自然が選ぶ美しい形」
市川学園 飯高匡展 先生
第4回 7月25日(土) 「形を考えてみよう」
県立千葉高校 阿部 敬 先生
第5回 8月2日(日) 「錯覚する条件を探る!」
秀明大学 大山光晴 先生
第6回 8月22日(土) 「宇宙線を測定しよう」
加速キッチン 須藤 舞子 先生

ご参加ご希望の方は、国立科学博物館のWEBページ内イベント日程をご覧ください。
※イベントカレンダー上で、物理教室が開催される日程をクリックされますと、物理教室の詳細情報・お申込方法がご覧いただけます。
お問合せ先:国立科学博物館 学習企画・調整課 TEL:03-5814-9888



教室の様子


第1回 6月14日(日)「つくってなっとく!単位のひみつ」

夏目ゆうの 先生(宇都宮大学 共同教育学部)

 第1回は夏目ゆうの先生による単位についての教室でした。まずは、2つの数字を示して、その数字の組み合わせが何を意味しているのかを考えることから始めました。たとえば「100と15」の場合は、100メートル走とその記録(15秒)、子どもの身長と体重(100 cmで15 kg)、などです。ここで、ただの数字だけでは意味が正しく伝わらないことを確認しました。次に、身近であるはずの大きさを、どのくらい再現できるか挑戦しました。マスキングテープを、定規を使わずに1メートルの長さに揃えて切ってみます。私も挑戦しましたが10 cmも短くなってしまいました。また、ストップウォッチを使った10秒チャレンジも行いました。小学校の体育では50メートル走が一般的とのことで、自分の50メートル走の記録を申告し(計ったことがない、覚えていない人は予想タイム)、速さを計算してみました。この自分の速さを、飾り付け用のモールを手で振り回して再現してみました。モールの速さは赤外線センサをつかった速度測定器で計測しました。小学校高学年では10秒(5 m/sに相当)をきる児童もいますが、振り回したモール先端の速さは5 m/sに達するのも難しいことがわかりました。モールの長さが10数cmと短いこと、初速ゼロから動かし始めて、あまり遠くない位置で計測するしかないことなど関係しているのかもしれません。

 次に、本日の教室のメインであるカードゲーム「単位カードバトル」に移りました。このゲームは山田・安藤によって提案された中学生向けのカードゲーム[1]を提案者の許可を得て本教室向けに改良したもので、「長さ」「時間」「質量」や「面積」「体積」「速さ」「加速度」「力」などの物理量が書かれたカード(表面)が用意されています。裏面には「m」「s」「kg」などの単位が書かれています(表の物理量と裏の単位の対応はありません)。4名が2人1組の2チームに分かれて対戦しました。対面するチームの間のスペース(場)に、それぞれ3枚のカードを、表面を上に出します。そこにかかれた物理量の中から1つを選び、その単位を手札である6枚のカードに書かれた単位の組み合わせで作り上げます。他に演算を指定するための、表が「×」で裏が「÷」のカードが5枚用意されています。出来るだけ多くのカードを使って正しく物理量の単位を作ったチームが勝者となり,勝者はコインを1枚獲得できます。その他、手札交換など、ゲームが停滞しないよう補足的なルールがありますが、ここでは省略します。普段大学生相手に次元解析などを教える際は、組み立て単位の構成要素は7つのSI基本単位となりますが、今回の教室では力学分野の「m」「kg」「s」しか登場しません。しかしこのゲームでは、カード裏面には「J」や「Pa」、組立単位の「m/s」や「m/s2」などもあります。たとえば、「時間」の単位を作るのに手札が「Pa」「kg」「m2」「m/s」「s」「m」だったとすると、一番簡単なのは、「s」1枚となります。しかし、弱そうです。ここでPaの中身を考えて、Pa=N/m2=kg・m・s-2・m-2 =kg・(m/s) ・s-1・m-2という分解に気が付けば

「kg」×「m/s」÷「m2」÷「Pa」

という強そうな答えが出てきます。ゲームではこの答えを出すためのThinking timeを90秒としました。参加者は小学5・6年生と中学1年生でしたが、サポート役である大学生や大学院生、大学教員と同じくらいのスピードで強い手を思いついていたのには驚かされました。また、作った答えは、自分で相手側に説明した上で、相手が検証することになっており、これも理解を深めるプロセスになっていたように思いました。

 物理教室では工作や体験などを行うことが多いのですが、カードゲームはおそらく初めての試みだったと思います。予想以上の盛り上がりに驚くとともに、単位の基本的な理解に非常に有効だと感じました。最後に参加者には、「新品の単位カードバトル」がお土産で配布されました。

[1] 山田 貴人, 安藤 秀俊,「単位同士の演算を習得させる教材の開発~対戦型カードバトルを基に~」日本科学教育学会研究報告(2015)30(1) pp.41-44. (2026年6月閲覧)

2026-shokai1-1.jpg 2026-shokai1-2.jpg

2026-shokai1-3.jpg 2026-shokai1-4.jpg

2026-shokai1-5.jpg 2026-shokai1-6.jpg


第2回 6月27日(土)「光のトリックを設計しよう ― 光を曲げる、色をあやつる ―」

NHK 小幡哲士先生

台風のため、中止


第3回 7月5日(日)「シャボン膜で探る!自然が選ぶ美しい形」

飯高匡展 先生(市川学園中学校・高等学校)

 第3回は飯高先生を講師にお迎えし、「シャボン膜がどのような形をつくるのかを、実験を通して探る」実験教室が開催されました。はじめに、細いソフトワイヤーで輪を作り、シャボン液につけて膜や泡をつくる基本操作を体験しました。次に、平面上において「3つの頂点からの距離の和が最も短くなる場所」をシャボン膜で導き出す演示実験を見学しました。表面張力によって膜の面積が最小になろうとする物理現象が、数学的な最短経路に対応した形が現れる様子に、子どもたちからは驚きの声が上がりました。

 後半は、考える舞台を平面から空間へと広げました。各自がソフトワイヤーを使って「三角錐」や「直方体」の立体骨組みを製作。これをシャボン液に浸して静かに引き上げると、三角錐では6枚の膜ができ、それらの境界となる4本の線が中央の1点に集まり、直方体では中央に四角形の膜が不思議と浮かび上がりました。さらに、ワイヤーと糸を使ってシャボン膜を張り、糸を引っ張ることで、膜が縮もうとする表面張力の働きを、手応えとして感じました。

 参加した小学生・中学生たちは、立体を組み立てる細かい作業にも集中して楽しく取り組んでいました。自分で作り上げた立体ワイヤーを様々な角度から覗き込み、自然の不思議が生み出す美しい膜の形を熱心に観察する姿が印象的でした。

2026-shokai3-1.jpg 2026-shokai3-2.jpg

2026-shokai3-3.jpg 2026-shokai3-4.jpg

2026-shokai3-5.jpg 2026-shokai3-6.jpg


第4回 2026年7月25日(土)「形を考えてみよう」

阿部 敬 先生(県立千葉高校)

​ 第4回は、阿部敬先生(県立千葉高校)を講師にお迎えし、先生が指導するグローバルサイエンス部の高校生3名のサポートのもと、「形」に着目した実験教室を行いました。物理では、「形」はとても重要です。人工衛星の太陽光パネルや結晶の構造などの先端科学の基礎であると同時に、身の回りには「形」の物理がたくさんあります。今回の物理教室では身の回りの「形」に注目しました。

​ 最初は阿部先生の誘導で、野菜の断面や葉脈など身近な「形」に注目しました。緊張気味だった参加者も、すぐにリラックスした様子になりました。正多面体の展開図の考察では、小学生にも馴染みのある正六面体(立方体)の展開図が11種類あることを共有し、参加者は次第に幾何学の面白さへと引き込まれていきました。
​特に印象的だったのは、代表的な十字架型の展開図を用いた実演です。あえて本来とは違う位置に折り目をつけることで、展開図は十字架なのにまったく異なる立体が完成し、参加者からは驚きの声が上がりました。参加者は事前に用意された多様な台紙を使い、工夫を凝らした立体作りに夢中で取り組み、中には4種類もの立体を完成させる人も見られました。

​ 終盤には、正方形を細分化したものや、折り目が稜と直交しない斬新な立方体の展開図が紹介され、「皮むき器を使ってむいたリンゴの皮」との類似性を皆で確認しました。最後は「リンゴの皮」を模した展開図から実際に立体(擬似球)を作り上げ、「形」の不思議と奥深さを存分に体感する講座となりました。

2026-shokai4-1.jpg 2026-shokai4-2.jpg

2026-shokai4-3.jpg 2026-shokai4-4.jpg

2026-shokai4-5.jpg 2026-shokai4-6.jpg