世田谷区中学生講座(世田谷区教育委員会、日本物理学会物理教育委員会)

2018年度 世田谷区中学生講座(新・才能の芽を育てる体験学習:サイエンス・ドリーム)

 世田谷区教育委員会主催、日本物理学会協賛の「世田谷区中学生講座(新・才能の芽を育てる体験学習:サイエンス・ドリーム)」では、世田谷区立中学校の生徒を対象に、物理や科学に対する驚きや楽しさを体感してもらうことを目的として、普段の授業では体験できない実験や 施設の見学などの連続講座を行っております。
 昨年より、1学期終了直後の7月下旬に2回の独立講座とし開催し、参加しやすくしました。 今回も大学1年生が実験授業で使用する設備をそのまま利用して、力学に関係する以下の2テーマを取り上げました。

お問合せ先 : 世田谷区教育委員会事務局 生涯学習・地域・学校連携課 
TEL : 03-5432-2739

新・才能の芽を育てる体験学習「サイエンス・ドリーム」(全2回)
会場
日時

テーマ
国立大学法人 電気通信大学
第1回 7月24日(火)13:30-16:30 (参加者12名)
第2回 7月25日(水)13:30-16:30 (参加者13名)
「お弾きが衝突すると?」
「かたい金属も変形する!」

 1日1テーマの実験講座として募集しましたが、2日とも定員を超える応募があったため、2個のテーマを両日実施しました。2日とも参加した生徒は10名でした。

「お弾きが衝突すると?」(参加者数:第1回7/24(火) 5名、第2回7/25(水) 6名)

エアホッケーと同様の構造をもつエア・トラック(滑走台)を用いて、お弾き(滑走体)の衝突実験と、滑走体にはたらく小さな空気抵抗の存在を確認しました。 まず始めに、エア・トラック上で直線運動する滑走体の速さの測定原理について学び、mm(ミリメートル)やms(ミリ秒)という単位で計測した量からm/s(メートル毎秒)という単位での速さの計算方法などを練習しました。 次に質量がほとんど等しい滑走体を衝突させ、衝突前後の速さの変化を観測し、運動量がほとんど保存されていること、わずかに異なる理由を考えてみました。 2つ目の実験はエア・トラック上の1m程離れた2点間での滑走体の速さの変化を計測し、2点間の平均の加速度(減速なので負の量)を求めました。 横軸に平均の速さを、縦軸に平均の加速度の大きさをとったグラフを作成し、この加速度の大きさが平均の速さが大きい程大きいことを確認しました。 つまり、速いほど減速させる力が大きいことがわかりました。 グラフをよく見ると、平均の速さと加速度の大きさは直線関係からわずかにずれていることもわかりました。 そして、速度に比例する抵抗と速度の二乗に比例する抵抗があることを教えてもらい、今回、前者が主で、後者の効果が僅かに加わっていることがわかりました。
また、速さと速度の違いや、運動量という言葉の使い方が物理の先生と体育の先生で異なるなど、身近な言葉でも物理の世界では特定の意味を持つ場合があることも学びました。

実験の様子1  実験の様子2


実験の様子3 実験の様子4

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「かたい金属も変形する!」(参加者数:第1回7/24(火) 7名、第2回7/25(水) 7名)

もののかたさ、曲がりやすさは、材料のもつひとつの重要な性質で、ヤング率といいます。 鉄や銅などのいくつかの棒の変形量を、光てこの方法を使って精密に測定しました。 40cmの長さの棒の変形量はごくわずかなので、レーザー光線などを上手に使わねばなりません。 7種の材料の中から、各班で自分たちがすきなものを使って測りました。 炭素繊維強化プラスチックが軽くて人気でした。 200gのおもりを順につけていくと、レーザー光線がおよそ1mmずつ移動していく測定を、2名の班ごとにテキストをみながら積極的に実験してくれました。 この結果をグラフにして正確な値を得ようとしたのですが、まっさらなグラフ用紙に図示していくのは慣れていないようで、ここは皆でいっしょに行いました。 棒の変形量としては、1mmの 1/60 まで正確に測定することができました。 また、フックの法則がきれいに成り立つことも確認できました。

実験の様子1.JPG  実験の様子2

実験の様子3  実験の様子4

両日とも休憩時間に、「極低温実験装置の中身」(第1回)、「分光計で身の回りの光をみてみよう」(第2回)を企画しました。 ちょうどメンテナンス中だったクライオスタットを観察したり、液体窒素に「触れて」みました。また、直視分光計で蛍光灯や水銀灯、LEDなどを分光して観測しました。簡易分光計を用いて、波長で分けることも体験しました。

実験の様子5.JPG 実験の様子6