世田谷区中学生講座(世田谷区教育委員会、日本物理学会物理教育委員会)

2024年度 世田谷区中学生講座(新・才能の芽を育てる体験学習:サイエンス・ ドリーム)

世田谷区教育委員会主催、日本物理学会協賛の「世田谷区中学生講座(新・才能の芽を育てる体験学習:サイエンス・ドリーム)」では世田谷区立中学校在学の中学生及び世田谷区内在住の中学生を対象に、物理や科学に対する驚きや楽しさを体感してもらうことを目的として、普段の授業では体験できない実験や施設の見学などの講座を行っております。
今年度は1日で3テーマの講座を同時開催いたしました。いずれのテーマも会場としている電気通信大学の大学1年生が授業で使用する実験設備をそのまま使用し、実験内容のみ中学生向けにアレンジしたものです。

お問合せ先 : 世田谷区教育委員会事務局 地域学校連携課 
TEL : 03-5432-2723

新・才能の芽を育てる体験学習「サイエンス・ドリーム」

会場

日時

定員
国立大学法人 電気通信大学

7月27日(土)13時30分~15時30分

3テーマ各12名、計36名

講座①「金属の変形を測るには?」(当日参加者数:9名)

 大学の実験授業では、「ヤング率」という課題名で、両端を固定した金属棒の真ん中に荷重を与えたときのわずかな"たわみ"の大きさを、光てこ法を用いて計測し金属の弾性定数の一つであるヤング率を求めるという実験です(ユーイングの装置として知られています)。しかしヤング率という量の理解は中学生に非常に難しいので、1mm以下のわずかな変化をどのようにして計測するのか、という計測方法の理解と、荷重とたわみの量の関係をグラフに表して、そのグラフの傾きが金属の硬さ(たわみにくさ)に対応することを理解することを目標としました。
 金属棒の種類は、銅、真鍮、アルミニウム、鉄、ステンレス、ジュラルミンで、最近は使用回数が減った硬貨の材質と関連させて紹介しました。試料棒をまず、その両端を支える台に載せてから、棒の真ん中を指で押してどれくらいたわむのかを体感してもらいました。次に光てこ法の原理を説明し、金属棒と反射鏡、レーザー光との位置調整などを行いました。荷重は、分銅(1個200g)を用いて最大6個分の荷重をかけ、荷重をかけたことで反射鏡がわずかに傾き、レーザー光の反射光の位置が変化する量をスケール上で読み取ります。分銅なしの状態とあわせて7個のデータをとり、横軸に荷重(質量)を、縦軸に反射光の位置をとったグラフを、方眼紙を使って作成しました。
 光てこ法という変わった計測方法の説明から、スケール上の値の読み取り方、グラフの書き方など、かなり多くの内容を盛り込んでしまい、少し消化不良になってしまったかもしれませんが、今後の学校での理科の実験などに生かしてもらえたらと思います。

 

講座②「電気の波形を観察しよう」 (当日参加者数:5名、欠席者数:1名)

 「電気回路」の実験装置を用いました。ひとり1台ずつオシロスコープを使って、横軸時間、縦軸電圧の波形を観察しました。回路は、ひとり1個ずつブレッドボードを用いて組んでいき、LEDの両端電圧や音の振動数をオシロスコープの画面上で確認しました。
 はじめに、白色LEDと1キロオームの抵抗をブレッドボードに順にさしていき、乾電池をつないでLEDを点灯させました。そのとき、LEDの両端電圧が2.8 V程度であることを確認しました。次に、端子を14個もつシュミットトリガーインバータの半導体を用います。電池とキャパシタと複数の抵抗、そして圧電スピーカを接続し、1 Hzで音がポツポツと鳴るようにしました。音とともにスピーカの両端電圧が上下するのをオシロスコープで確認できました。スピーカと並列にLEDを接続すると、LEDの点滅と音が同期しています。ここまで順調に回路製作はすすみいったん休憩となりました。
 休憩後は、ししおどしの動画をみて、半導体によって、ストップされていた電流が、キャパシタに電荷がたまるとながれはじめて、その後また電流がストップされ、というのを繰り返しているという説明がなされました。接続する抵抗を交換して、2 Hz、10 Hz、100 Hzなどと、音のポツポツとLEDの点滅を変化させていきオシロスコープで波形を観察しました。そして、耳で聞こえる振動数まで音を高くして、おわりには可変抵抗を接続して音の高さが変わる様子を体験しました。参加者はみな、隣の席の人とも協力しながら、すこし難しい回路も完成させ、自分で可変抵抗をまわしたりオシロスコープの表示領域を変更したりするなど、電気と音について自分の手を動かしてして体験することができたと思います。

 

講座③「閉じ込められた音の正体」 (当日参加者数:4名、欠席者数:3名)

 4名の参加者に対して、円環を利用したクントの実験で音波の振る舞いを可視化し、空気とエアコン用ガスの音速を測定しました。円環の中では音波の強め合いが起こり大きな音となっています。はじめに音は空気の波であり、波は重ね合わせで強め合いが起こることの実験を行いました。実験ではPCにつないだ2つのスピーカーから音が同位相では大きく聞こえることを確認してもらいました。次に参加者が実験装置を操作し、円環に音を閉じ込める実験を行いました。円環の円周と音の波長が整数倍のとき、音の強め合いによる閉じ込めが起こります。このとき閉じ込められた音により、コルク粉が激しく振動します。実験では、このときの音の周波数と円周の長さから計算する波長を使って空気の音速を求めました。参加者の求めた音の速さはおよそ340 m/sとなり、空気の音速として知られる数値と一致しました。空気より重たいエアコン用のガスで実験しました。参加者の予想のようにエアコン用ガスの音速が遅いことが確認できました。