Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)は、日本物理学会が刊行する月刊誌で、創刊以来、レベルの高い論文を出版してきました。各号は、Full Papers, Letters等のオリジナル論文から構成され、随時、Invited Review Papers, Special Topicsを掲載しています。最新の論文は、オンライン公開後、約1か月間無料でご覧いただけます。[> JPSJホームページ]
注目論文 (Papers of Editors' Choice)
- 毎月の編集委員会では、注目論文(Papers of Editors' Choice)を選んでいます。その日本語による紹介文を日本物理学会誌とJPSJ注目論文に掲載しています。注目論文はオンライン公開後1年間無料で閲覧できます。関連した話題についての解説がJPSJホームページの「News and Comments」覧に掲載される場合もあります。
JPSJニュースレター
- 年次・秋(春)季大会の開催にあわせてニュースレター(日本語)を発行しています。
JPSJニュースレター最新号(No. 41) をウェブ公開しました。
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最新のJPSJ注目論文
電子状態が液晶のように方向性を持つ量子液晶の1つである鉄系超伝導体の電子ネマティック相では、方向性の強度が実空間で波状になる新奇なドメイン構造が報告された。これは、量子液晶の剛性が高いためにドメイン壁が異常に厚くなるためと考えられている。レーザー励起光電子顕微鏡を用いた電子ネマティック相の観察を複数の物質で行い、それらを比較することから系が通常金属から逸脱する度合いとドメイン壁の厚みがよく対応していることが見出された。これにより、量子液晶の剛性には、異常金属をもたらすスピンや軌道のゆらぎが大きくかかわっていることが示唆される。
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Coherence Length of Electronic Nematicity in Iron-Based Superconductors
Yoichi Kageyama, Asato Onishi, Cédric Bareille, Kousuke Ishida, Yuta Mizukami, Shigeyuki Ishida, Hiroshi Eisaki, Kenichiro Hashimoto, Toshiyuki Taniuchi, Shik Shin, Hiroshi Kontani, Takasada Shibauchi
J. Phys. Soc. Jpn. 93, 103702 (2024)
代表的な強誘電体であるBaTiO3に、近年開発された多波長中性子ホログラフィーを適用し、蛍光X線ホログラフィーでは観測が困難だった酸素原子の可視化に成功した。これより、強誘電性の起源である酸素原子の変位の大きさについても評価可能になり、自発分極を原子スケールから理解する上で強力な解析手法になることを示した。
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Atomic Imaging of BaTiO3 by Multiple-Wavelength Neutron Holography
Kota Yamakawa, Hajime Nakada, Koji Kimura, Kenichi Oikawa, Masahide Harada, Yasuhiro Inamura, Kenji Ohoyama, and Koichi Hayashi, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 104601 (2023).
1930年代には磁性体に加えていた磁場を消去する方法によって1ケルビン(摂氏マイナス272度)以下の温度を実現することが可能となった。これと同じような冷却操作を電場でも行うことができるのではないかというアイデアに基づいて、強誘電性と強磁性の両方の性質を併せ持つガドリニウムと鉄の酸化物に着目して実際に電場による冷却に成功したことが報告された。
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Magnetoelectric Coupling Based Caloric Effect in Multiferroic GdFeO3
Rintaro Ikeda, Takashi Kurumaji, Yusuke Tokunaga, and Taka-hisa Arima, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 094709 (2024)
ワイル半金属は、古典電磁気学を超えた電磁応答を示すトポロジカル物質の一つであり、基礎研究のみならず、スピントロニクス機能性の観点からも注目されている。仮想的なゲージ場「カイラルゲージ場」を用いてワイル半金属の電磁応答を記述する試みがあるが、磁性ワイル半金属ではその構造に関する知見は限られていた。本論文は、巨大なスピン分極を持つ磁性ワイル半金属Co3Sn2S2に着目し、磁気構造とカイラルゲージ場描像の対応関係を有効模型に基づき示している。これにより、磁性ワイル半金属における磁気構造に関連した様々な電磁応答の探索が期待される。
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Chiral Gauge Field in Fully Spin-Polarized Weyl Semimetal with Magnetic Domain Walls
Akihiro Ozawa, Yasufumi Araki, and Kentaro Nomura J. Phys. Soc. Jpn. 93, 094704 (2024).