日本物理学会誌

第56巻 第7号(2001)

cover0107.jpg表紙から
15.6 GeV (核子あたり390 MeV) の水素様 (軌道電子を1 s軌道に1個持つ)Ar17+イオンを厚さ31 μmのシリコン半導体検出器 (SSD) の結晶に(220) 面チャネリング条件下で通過させた場合の (k, l)=(1, 1) 条件に対するコヒーレント共鳴励起スペクトル.横軸は(220) 面内で入射角度θを [110] 軸方向から変化させたときの入射角度θを,縦軸はSSDへの付与エネルギーΔEを示し, 特定のθ, ΔEのときのコヒーレント共鳴励起を径由してAr17+イオンが裸のAr18+にイオン化する割合FRCE17→18 (θ, ΔE) を2次元等高線プロットで示す. 入射角度θは,1 s状態から主量子数 n=2 準位への電子準位遷移エネルギーに,付与エネルギーΔEはイオンのチャネリング軌道振幅にそれぞれ1対1対応する.従って,横軸を遷移エネルギー,縦軸をイオン軌道振幅に読み替えられる.チャネリング軌道振幅が小さい(縦軸で下方)場合には, 1 s-2 p ( j=1/2, 3/2) に相当する2カ所で遷移が起こっており,チャネリング軌道振幅が大きくなる(縦軸で上方)に従って, イオンが経験する結晶中の電場が大きくなるため,シュタルク効果により主量子数n=2 準位が複雑に分裂する様子が現れている.詳細は本号解説記事参照.(東京都立大学大学院理学研究科物理学専攻 東俊行氏提供)



特別
寺内正己: 「理科離れ」と「出前授業」
解説
酒井英行、市村宗武: 原子核のスピン・アイソスピン応答研究の新たな展開
東 俊行: 結晶場による相対論的重イオンのコヒーレント共鳴励起の観測
最近の研究から
佐藤勝昭、石橋隆幸: カルコパイライト型室温強磁性半導体
近藤 淳: 2次元ハバード模型はなぜ超伝導になるか
巨海玄道、本多史憲、加賀山朋子、大貫惇睦: 強磁性UGe2の磁気体積効果と圧力誘起相の電子状態
話題
吉田篤正: HETE-2衛星-宇宙最遠の天体現象を狙う
藤本眞克: 世界最高感度を達成した重力波望遠鏡TAMA300
学界ニュース
船越義裕: KEKB世界最高ルミノシティを達成!
授業の小道具
兵頭俊夫: 打撃の中心
追悼
牧島一夫: 小田稔先生のご逝去を悼む
渡辺信一: さようなら、Fano先生
科学研究費
大貫惇睦、佐藤勝彦、鈴木厚人、山田耕作: 平成13年度科学研究費(基盤研究等)審査報告
会員の声
■遊び心とエントロピー増大則 ■ITERの建設に反対します
新著紹介
長岡洋介: 藤田敏三児玉隆夫世良正文坪田 誠: 低温の物性物理
田口善弘: D.ben-Avraham and S.Havlin: Diffusion and Reactions in Fractals and Disordered Systems
山本昭二: D.P.Divincenzo and P.J.Steinhards,ed.: Quasicrystals; The State of the Art, 2nd ed.
細野 忍: A.Fokas, A.Grigoryan, T.Kibble and B.Zegarlinski,ed.: Mathematical Physics 2000
柴崎徳明: N.Glendenning: Compact Stars; Nuclear Physics, Particle Physics and General Relativity
編集後記
中川賢一