日本物理学会誌

第57巻第11号

cover0211.jpg表紙から

球殻構造を有するフラーレンの電離、電子付着、拡散等の素過程を通して、同じ質量同士または異なる質量の正イオンと負イオンから成るプラズマを発生した。 これら新種のイオンプラズマ中における荷電粒子間のクーロン相互作用や局所的な直流電場による加速・減速等の基本的なプラズマ物理現象を活用すると、ナノ スケールで物質の構造を制御できることが期待される。実際に、表紙に示すようなフラーレンが融合したフラーレンダイマー[中央右]、カーボンケージ内に異 原子を取り込んだ金属内包フラーレン[中央左]に加えて、プラズマイオン照射によって構造変形(湾曲・屈折・切断)を生じた部分[左中、下]より侵入した 原子列(直鎖、螺旋、結晶状)[下段]やフラーレン分子列を包み込んだ[右上]カーボンナノチューブ、さらには、対向した原子列と分子列(接合)を内包し たカーボンナノチューブ[上中央]を効率的に形成できることが明らかになってきた。詳細は本号解説記事参照。 (東北大学大学院工学研究科 畠山力三氏提 供)



解説
中村泰信:ジョセフソン接合量子ビット研究の進展
畠山力三:プラズマを活用して新規ナノ構造を創る
伊藤公平,渡部道生、大塚洋一:半導体中の電子はどのように遍歴化するか?-モット・アンダーソン転移の臨界指数-
最近の研究から
竹中康司:「不良金属」の物理
長野正道:粘菌が教える新しいリズム同期化法
安井幸夫、金田昌基、佐藤正俊、門脇広明:スピンアイス系の磁気相関
談話室
森  肇:カオスの2重構造と自然の階層性
国際会議
中村良治:第3回ダストプラズマ物理国際会議
新著紹介
(短)真貝寿明: 戸田盛和: 宇宙と素粒子30講
野尻美保子: N.Polonsky: Supersymmetry; Structure and Phenomena; Extensions of the Standard Model
宮武宇也: G.Fazio, G.Giardina, F.Hanappe, G.Imme and N.Rowley: Nuclear Physics at Border Lines; Proceedings of the International Conference
小林憲正: G.Horneck and C.Baumstark-Khan, ed.: Astrobiology; The Quest for the Conditions of Life
岡部 豊: H.ゴールド・J.トボチニク著, 鈴木増雄監訳, 溜渕継博監翻訳, 石川正勝・宮島佐介訳: 計算物理学入門
会員の声
■2002年会で物理学者の社会的責任「分科」シンポジウムがインフォーマル・ミーティングで 開かれた経過 ■理事会からの回答 ■核融合炉ブランケット材料の見通しは立ったのか? ■反論:工学的成立性に基づく実用材料開発の実態への理解を望む!
編集後記
福島孝治