表紙から
反水素原子は、陽子の反粒子である反陽子(質量が陽子と等しく電荷が負の粒子)と、電子の反粒子である陽電子(質量が電子と等しく電荷が正の粒子)の束縛
系である。反水素を生成するには、反陽子と陽電子を各々減速し、磁場と電場を組み合わせたトラップ内に閉じ込めて混合する。生成した反水素は閉じ込めから
解放され、トラップ電極に衝突して消滅するので、これを検出器で捉え、反陽子消滅と陽電子消滅が同時に同じ場所で起きたことを確認する。実際の反水素消滅
事象の一例を左下に示す。詳細は本号早野氏の解説記事参照。(写真提供=撮影:東京大学 早野龍五氏)
- 巻頭言
- 秋光 純: 二期目を迎えて
- 解説
- 蔵元英一: 結晶中の照射欠陥の基礎的挙動とバイアス効果
- 早野龍五、堀 正樹、藤原真琴: 反陽子原子の精密分光-反陽子ヘリウム原子と反水素原子-
- 実験技術
- 杉山和彦: マイクロ波と光周波数を結ぶ新しい周波数チェーン-モード同期レーザーによる光周波数計測技術-
- 最近の研究から
- 内田慎一、永長直人: 高温超伝導と電子-格子相互作用
- 根來 均: ブラックホールからのX線の短時間変動
- 笠木治郎太、結城秀行:固体金属中の核融合-金属は核反応の特殊環境か?-
- 話題
- 粟屋かよ子:「環境物理学」のすすめ
- 特別
- 北原和夫:新領域「物理と社会」の発足に向けて
- 談話室
- 細谷暁夫: 物理的とは何だろうか?
- 石井武比古: タイ国立放射光科学研究所の建設
- 追悼
- 渡辺二太、藤原正巳:高山一男―プラズマ物理学の先導者―
- 新著紹介
- 佐野 理: J.デュラン著, 中西 秀・奥村 剛訳: 粉流体の物理学; 砂と粉と粒子の世界への誘い
- 川上則雄: E.Abdalla, M.C.B.Abdalla and K.D.Rothe, ed.: Non-Perturbative
Methods in 2 Dimensional Quantum Field Theory, 2nd ed.
- 名取晃子: M.C.Tringides and Z.Chvoj, ed.: Collective Diffusion on
Surfaces; Correlation Effects and Adatom Interactions
- 冨松 彰: V.Belinski and E.Verdaguer: Gravitational Solitons
- 編集後記
- 松下 貢