日本物理学会誌

第59巻第4号

cover0404.jpg表紙から
有機磁性分子の理論的なモデルにおけるスピン相関関数。分子内のスピン整列がドーピングにより制御可能なことを示している。π電子系が仲介する二つのラジ カルが、中性状態で反強磁性的に結合しているのに対し(グラフ上)、ホールを1個ドープすることにより、強磁性的結合に変化する(グラフ下)。また、この ときのスピン整列の変化を模式的に示す。背景は、スピン整列の制御可能な磁性分子に対してハイブリッド密度汎関数法により計算されたスピン密度分布である (上:中性状態、下:ドープ状態)。この分子は泉岡明氏(茨城大)らの先駆的な実験に用いられた。詳細は本号掲載の下位幸弘氏らの最近の研究から欄記事参 照。(産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部 下位幸弘氏提供)


最近のトピックス
大橋洋士:フェルミ原子ガスの新しい超流動 --BCS-BECクロスオーバーの実現--
中村卓史:連星中性子星の合体率と重力波天文学
世界物理年に向けての動き
北原和夫
科学は今‥‥
日原さやか、入來篤史:サルは 『空間』 をどう理解しているか
最近の研究から
丑田公規、益田晶子:実験で観測される拡散係数に見る時空間相関と生体系の物質輸送
下位幸弘、Ping Huai、阿部修治:有機磁性分子におけるスピン整列の電子的制御
杉野 修、宮本良之:電子励起反応の第一原理シミュレーション
渡辺一之、中岡紀行、渡邉 聡、田中倫子:ナノスケール構造の静電容量の第一原理計算
阿久津典子:吸着子のある微斜面におけるサーマル・ステップ・バンチングとステップ間引力--密度行列繰り込み群アルゴリズムを用いた統計力学研究--
シリーズ「物理教育は今」
鈴木 亨:高校物理新課程の問題点
歴史の小径
佐藤文隆:理論物理学者の起源
新著紹介
小田 研:三浦 登、毛利信男、重川秀実「極限実験技術」
谷口貴志:P. K. Khabibullaev and A. A. Saidov「Phase Separation in Soft Matter Physics; Micellar Solutions, Microemulsions, Critical Phenomena」
大谷 実:西谷滋人、青木正人、武藤俊介編「21世紀の格子欠陥研究に残された課題」
岡崎 進:上田 顯「分子シミュレーション;古典系から量子系手法まで」
会員の声
■三屋清左衛門的物理屋報告余聞:科学研究の自由と規制< ■本会出版物における日本人名のローマ字表記について ■Galileo Galilei ■コメント
編集後記
飽本一裕