第63巻第1号
スーパーカミオカンデで観測された宇宙線μ粒子の天球分布. 他の天球の方向よりもμ粒子がたくさん来た方向を赤で,他の方向よりも少ない方向を青で示した.左上は平均と比べた多さ,少なさを-0.5%から0.5% までの割合で示したものである.右下のその有意さを標準偏差の-3倍から3倍までで示した.これらは世界で初めてのμ粒子から得られた一次宇宙線強度の2 次元天球分布である.赤線で囲った宇宙線が多い領域をTaurus excess(直訳すればおうし座からの超過),青線で囲った少ない領域をVirgo deficit(同じくおとめ座からの欠損)と名付けた.背景のイラストは宇宙線の超過が発見されたおうし座.
巻頭言
物理は役に立つ 鹿児島誠一 1
解 説
スーパーBファクトリーで探る標準模型を超えた物理 山内正則 2
驚異の加速器計画:SuperKEKBファクトリー 大西幸喜 10
空間反転対称性のない物質における超伝導 藤本 聡 18
最近の研究から
固体における光電子の反跳効果:硬X線領域の新しいパラダイム 高田恭孝,萱沼洋輔 29
希土類化合物の光学スペクトルに現れる普遍的スケーリング 岡村英一 34
弦の場の理論における厳密解 高橋智彦 38
スーパーカミオカンデの地下μ粒子で見る宇宙 大山雄一 43
話 題
局在と遍歴 守谷 亨 48
JPSJの最近の注目論文から Vol. 76 (2007) No. 10より 髙山 一 52
シリーズ「"ポスドク" 問題」
文部科学省のキャリアパス事業と物理学会の取り組み 栗本 猛 54
学界ニュース
「巨大磁気抵抗効果の発見」にノーベル物理学賞 鈴木義茂 57
2007年度ノーベル化学賞; G. Ertl氏 村田好正 59
その日のフリッツ・ハーバー研究所 渡辺量朗 60
歴史の小径 土星モデルを超えて--長岡半太郎の先駆的原子核構造研究-- 稲村 卓 61
談話室 地球温暖化における炭素問題 一丸節夫 63
新著紹介 65
相転移の分子熱力学: 阿 竹 徹
仁科芳雄往復書簡集; 現代物理学の開拓
I コペンハーゲン時代と理化学研究所・初期 1919-1935
II 宇宙線・小サイクロトロン・中間子 1936-1939
III 大サイクロトロン・ニ号研究・戦後の再出発 1940-1951: 岡 本 拓 司
ブラックホールと高エネルギー現象: 山 崎 了
超対称性理論; 現代素粒子論の基礎として: 今 村 洋 介
ミクロとマクロをつなぐ; 熱・統計力学の考え方
マクロな体系の論理; 熱・統計力学の原理
相転移・臨界現象; ミクロなゆらぎとマクロの確実性: 田 崎 晴 明
編集後記
上妻 幹旺